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 No.652

三輪 薫(みわ かおる)


No.652 『創る』/デジタル時代のカメラとプリント 2016/10/5

近年のデジタルカメラの画素数は飛躍的に増え続け、上級クラスは3,000万画素から5,000万画素まで多くなっています。見た目にはフイルムカメラ時代の小型カメラと同様な大きさのレンズ交換式のデジタルカメラの安価なタイプでも30万円台、高額なものになると70万円近くなります。このような高額なカメラでも4、5年経つと次機種が発売となり、購入時には満足感の高かったカメラでも何となく過去のカメラに思えてしまうでしょう。フィルム時代にはこの価格帯のカメラを入手すれば一生使い続けることができると、思い切って買った人も結構いたのではないでしょうか。しかし、デジタル時代の現在では、このような機種といえども使い捨て感覚に近い消費物でしかないような気がしてきます。つまり、どのように高級なカメラを入手しても夢物語は束の間に終わってしまいます。メーカーの開発と販売戦略にいつまでお付き合いできるか、とても難しい時代になってきたと思います。小型カメラといえども結構大きく、重く、かさばり、高額になるばかりです。1998年に学研から「中判写真の基本」というハウツー本を出した時、当時のレンズ交換式35ミリ判カメラの高級タイプのボディーと開放F値の明るいレンズと中判カメラの645(645判)のボディーとレンズを比べてみたことがありました。カメラザックに収納した結果、何とほとんど変わらなかった記憶があります。当時もすでに小型カメラといえども結構な大きさだったのです。

僕の伊勢和紙にプリントした個展では、機械漉きの860ミリ幅のロール紙や、四八判(1,100mm×2,400mm)の手漉き和紙を結構使って展示していますが、特に四八判ともなるとプリントの実画面サイズが900mm×1,800mmくらいになることもあり、最低でも3,000から5,000万画素が必用かも知れません。現在愛用のボディーはEOS 6Dで、2,000万画素です。四八判の和紙へのプリントでは確かに不足で、プリントをお願いしている伊勢和紙の中北喜得さんの裏技に期待することになり、負担をお掛けしているのはよく分かっています。しかし、結果的に見るとこれでも十分だと思えるほどに仕上げていただいていて不足をあまり感じません。小型カメラは小さく軽いことがメリットで、歳を重ねる毎に本来の小型カメラが欲しくなってきます。近年レンズ交換式ミラーレスカメラの愛用者が増えてきているような気がしますが、大きく、重く、高額になるばかりのレンズ交換式一眼レフカメラが負担に思う年代の方々の支持を集めているからだとも思っています。写真愛好家の方のプリントサイズは、大きくても半切(A3ノビ)かせいぜい全紙くらいが多いようで、このサイズであれば超高画素数のカメラでなくても不足を感じることはあまりないでしょう。

昨年日本橋の小津ギャラリーで開催し、今年の冬に伊勢和紙ギャラリーで巡回展を行った「仏蘭西・巴里」の作品は大半35ミリ判のフィルムで撮ったものをデータ化してプリントしましたが、フィルム特有の粒状性が独特の雰囲気や奥行き感を再現してくれました。デジタルカメラは撮影には便利なことも多く、使い勝手もよく、大きな失敗はまず起こらなくていいですが、この画像データからプリントしたものと、小型カメラで撮ったフィルム画像をデータ化してプリントしたものを比べると、見たときの印象や味わいが何となく違って見えるような気がします。今やデジタル全盛でフィルム撮影者は超少数派になってしまいましたが、だからといってフィルムを全否定できない魅力があるのも事実です。年末に開催の「わの会」展では、毎回フィルム撮影の銀塩ペーパーでの作品を展示してきましたが、今回初めてインクジェットプリンターによる作品を出します。撮影は今まで同様フィルムで、カラーリバーサルで撮ったものをデータ化し、モノクロに変換してプリントしています。カナダ・イエローナイフで撮ったモノクロのオーロラの作品です。

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