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 No.31

三輪 薫(みわ かおる)


No.31  「写すこと」/「侘び寂」を写すフィルムと光 2001/6/8

自然風景を撮る多くの人達の愛用フィルムは大半がフジクローム・ベルビアで、カメラ誌などに掲載されているプロもアマの作品には、撮影データの中でベルビア以外を探すのが難しい程だ。確かに素晴らしいフィルムである。色合いの鮮やかさ、ぬけの良さ、コントラストの高い描写性、粒状性の細かさなど世界で一番であると言ってもよいだろう。世界的にもプロの愛用者が多くなっていると聞いている。日本人として嬉しいことだ。僕も愛用していて、今や無くてはならないフィルムとなっている。

しかし、僕の常用フィルムはコダックが多い。コダックの発色特性・再現性などにフィット感があり、僕が期待し、想いを寄せる日本の「侘び寂」の風景には、コダックフィルムと優しい光が合っているからだと思う。

また、晴れた日に派手目のフィルムでPLフィルター効果を大きくして撮ることはまれである。アスティァやエクタクロームE100Sなどのノーマルタイプでも、見た目よりも遥かに鮮やかに写り過ぎるからである。但し、光が強すぎる時は反射も大きいので、適度に除去するためには重宝なフィルターである。ほんの少し反射を取る効果を生かすのも、このフィルターの使い方の一つだ。

写真愛好家のフジクロームの常用が多いのは、ラボ事情にも起因しているようだ。地方へ行くほどコダック系のラボは皆無に近い。しかし、コダクローム以外のフィルムは何処のメーカー製でも現像処理が同じであり、全国・世界中何処でも処理が可能である。但し、日本では店によって富士写真フィルム(株)製品以外の入手が困難と聞いている。他社の企業努力を期待したいところだ。

こんなことを言うから、フジクロームが嫌いだと勘違いしないで欲しい。ベルビア、プロビア、アスティア、トレビと様様な銘柄を愛用し、作画と表現で使い分けている。写真はフィルム現像が出来あがらないと確かなことは言えず、分からない。その点フジクロームは、まず期待を裏切らない安全・安心なフィルムである。しかし、絶対的な期待感に沿った描写をするかと言えば、ノーとまでは言えないでも僕にとって最高の応えを引き出してくれるわけではない。コダックフィルムには、度々期待を裏切られている。しかし、作画と表現に合った描写を得られた時には、他の追随を許さないほどの凄い結果を生む。薄利多売的な結果を期待するのか、少々大げさだが宝くじ的な?描写に期待を寄せるかによってフィルムの選択も決まるだろう。何故僕がコダックを優先するかと言えば、一生に自分自身が満足できる本当の作品数はそれほど多くは出来ないと思っているからである。なら、数少なくても自分の人生を掛けた確かな作品を求めようと決めている。

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