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 No.32

三輪 薫(みわ かおる)


No.32 『生きること』/続編5「中国の世界遺産」 2001/6/21

先日、中国の世界遺産「九寨溝と黄龍」の撮影ツアーから帰ってきた。共に整備され、ゴミひとつ落ちていなかった。訪れる人達も今や多くなっているが、マナーの良さのためだろう。園内のシャトルバスはガソリンではなくガス式で、観光バスは入れない。人工的なものは木道や休憩所などだけで、日本のように公園内にホテルが林立している訳ではなく、宿泊施設は全て園外である。また、全域禁煙。罰金は日本円にして7500円。ガイドがライターを出しただけで取り上げられたほど。勿論、タバコを吸うために出したのではなく、何気なく持って遊んでいただけなのに。現在大気中の汚染を撒き散らしている国の一つだが、このような場所での徹底した配慮には感心させられた。喫煙は九寨溝のみ、売店・食堂のある村だけで可能。30年前に発見されたと言う九寨溝には、人々が長年暮している村があり、今も息づいている。

驚いたことの一つに、九寨溝の中にあったトイレの1箇所には、小さいながらロビーがあった。イスとテーブルも置いてあり、床は大理石で水洗の器具はTOTO製。日本のトイレ同様の扉もあり、男性用には豪華な西洋式トイレも一つある、まことに豪華なものであった。しかも、街道沿いのトイレが噂通りの様式で大半有料だったのに、ここは全て無料。園内に入るには入場料が必要で、サービスなのだろうか。

ここに来る前は、世界遺産に指定されたとは言え中国なのだから、数年で荒れてしまうのではないかと、何処かの国と同じ危惧を抱いていた。しかし、杞憂に終わりそうであり、そんな考えをしたのが恥ずかしいほどであった。地球上の素晴らしい自然は、その国のものだけではなく、世界中の人間・動物・生物のもの。いや、地球そのものの遺産である。後世まで残さねばならない、今や貴重なものであることを思い知らされた旅であったのが、何よりの収穫であった。アメリカやカナダなどでも同様の思いをしたものである。日本は遅れている。そして自分の意識も。

中国の旅には、トイレや食事に関して危惧を抱いていた。偏食なのと、オープンなトイレに抵抗があったからである。しかし、用意した日本食は一切無用で、トイレも心配するほどではなかった。今回、妻も同行したが、何とか無事だった?ようだ。

中国も大変素晴らしい国で、魅せられてしまった。4000m級の高地も通過したが、多くの生活者に出会い、人間の逞しい生き様の一端を垣間見ることも出来た。

紅葉や雪を抱いた姿、冬の厳しい季節の人々の生き様も是非見てみたいものである。テレビなどの映像では実感できない、肌で感じることへの期待感があるからだ。

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