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 No.33

三輪 薫(みわ かおる)


No.33 「写すこと」/自分の色を持つ 2001/7/4

自然はより自然らしく写し止めたいと思っている。勿論、好みの色は個人差があり、否定はしない。しかし、写真家の多くが同じ銘柄のフィルムを愛用するなど、僕には考えられないことである。特に自然を撮る人達が同じような色合いが好みとは驚きなのだ。音楽や食事やファッションなどの好みは千差万別なのに、写真のトーンに関して何故同様なのか、妙な思いがするのは僕だけであろうか。大半のプロが使っているからと言う理由で、それらのフイルムを愛用している写真愛好家もいるかも知れない。フイルムは銘柄によって様様な色調などが引き出せる。画家は絵の具をパレットで練って自分好みの色合いを創ることが出来る。しかし、写真の世界で自分独自のオリジナルフィルムを用意するのは不可能である。だから、市販されている様様な銘柄のフィルムを駆使し、自分の色を探るのは表現者として当然の成り行きの結果と思っている。

僕は強い光よりもソフトな光が好き。鮮やかな色合いよりも、しっとりした淡い色調にフィット感を抱く。だから晴れた日よりも曇り日や雨や霧に包まれた気象条件が好きだ。このような時には色合いもおとなしくなり、湿気に包まれた空気感や優しい光を再現してくれる。結果として「侘び寂」の雰囲気を引き出せると思っている。自分好みの色調再現には、被写体と表現目的によって、フィルムの銘柄と気象や光の選択を合わせて考えなければならない。晴れた日には、気がつくと日陰の光が優しい場所で撮っていることが多い。

僕が大好きなフィルムにコダクロームがある。以前は大半と言ってもよいくらい愛用していた。こくがあり、深淵な色合いが特徴で、色調も自然そのものである。あらゆる被写体に対しても期待を裏切らないフイルムであった。しかし、最近では現像処理に問題があるのかもしれないが、自分の期待する色調に仕上がることが少なくなり、使用量は少なくなっている。

愛用者の多くが僕と同じ理由で使用量は少なくなったとは思えないが、PKMが発売中止となって数年経ち、今年の暮れにはKMも製造打ち切りと聞いている。まことに残念と思っている。コダクロームは、今や愛用者が格段に減ってきて、アウトロー的な存在である。しかし、僕が最も信頼を寄せているフイルムであることには違いない。同時に撮って上がりが期待に応えてくれたフィルムは、他の追従を許さない素晴らしい描写力を発揮してくれるからだ。PKRやKRがまだあるとは言え、PKM・KMがこの世から無くなるのは残念で悲しいことだ。

いずれにしても、自分の美意識を支えてくれる銘柄のフィルムを、早く見つけるのが肝心だ。多くのフィルムをテストし、あらゆる条件でのマッチングを捜し求めるのも、写真での表現の楽しみであろう。

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