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 No.59

三輪 薫(みわ かおる)


No.59 『写すこと』/速写性は大切なことか 2001/9/30

大半の大型カメラや一部の中判カメラでは、AE撮影ではなく絞り値やシャッター速度を手作業で決めたり、アオリを使ったりしなければならない。つまり速写性はなく、現在の小型カメラのようにパチパチと気軽に速く撮れない。しかし、じっくりと被写体に向き合い全神経を集中して撮るには向いている。特に大型カメラではファインダーではなくピントガラスを覗き、ルーペでピントを確認し、アオリも活用するため、どうしても撮るまでに時間がかかる。しかし、その時間の経過の中に思考が生まれることも多くある。

中判カメラもフィルムの自動巻き上げになっている機種と、未だにクランクやレバーでガリガリと巻き上げるものとがあり、後者のタイプではその時々の自分のペースで巻上げが可能で、考え考え撮る時は、ゆっくりと巻き上げると徐々に思考がまとまってくるものだ。中判カメラの自動巻上げタイプは小型カメラの気分で、手巻きタイプは大型カメラの感覚で撮影できる。「写した!」と言う実感は手間隙かけて撮る機種のほうが満足感は高いだろう。今やプロの世界では大型カメラ離れが進み、一方写真好きな人たちには撮影の満足感が得られる大型カメラや中判カメラ志向も進んでいるようで、面白い現象だと思っている。

数年前に大型カメラメーカーに依頼され、撮影会のお手伝いをしたことがあった。この時の参加者は結構ご年配の方が多かったが、4×5インチ判カメラを楽しそうに扱い、実に熱心な撮影振りに感動を受けたものである。大型カメラの撮影の面倒さは、扱う人によっては面倒どころか楽しみに変化してしまう。結果を重視するか、撮影のプロセス楽しむのかで、愛用機種が決まってくるような気がする。

10月19〜20日には「大中判カメラ普及協会」主催の撮影会が乗鞍高原であり、久し振りのお付き合いとなる。撮影やカメラの扱いを楽しむ人達と、至福の時を過ごしてきたいと思っている。

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