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 No.63

三輪 薫(みわ かおる)


No.63 『写すこと』/世界で一つしかない機材 2001/10/30

僕が所有の機材には、改造した物もある。大手のメーカーが量産した機材でも、僕にとって使い勝手の良くないものもあるからだ。自分が使いやすいように改造を加えるのである。このような機材には思い入れも大きく、絶対に手放せない。中には手作り的な機材を発売しているメーカーの偶然一つしかないオリジナルを入手できたものもあり、このような出会いは嬉しいものだ。器用な方は自分で改造を加えているようだが、僕はメーカーやショップに依頼している。また、専門業者でないと改造できない難しいものもある。

その改造にしても「美しく」と言うのが僕の主張だ。いかにも改造しました、といった感じのものには惹かれない。「よい道具は、美しい!」と信じているからだ。日本人には世界に誇ることができる職人芸と言うものがある。この人達の愛用する道具は実に美しいし、これらの道具で作られた物も美しいと思う。伝統的な職業の方ばかりではなく、近代的な工業に携わる人でも同様だ。この人達の目も実に美しく、自信に満ち溢れた表情、風貌、視線には心惹かれることが多い。

若い頃、塗師に携わっていたことがあった。ある時、木彫の作家の仕事場に伺って、刃先が小さくなってもう使われていないと思った彫刻刀を欲しいと言ったら、「ダメだ!」と言われた。新品同様の彫刻刀を持ってきて、「これをあげるよ」と。何故なのか分からなかった。ここまで使い込んだのは、よく切れるからだと言われた。なるほどと思った。写真の道具にも共通点があるような気がする。今の機材にも、このように長年使い込みたい気持ちを託すものが欲しい。

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