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 No.103

三輪 薫(みわ かおる)


No.103 『写す』/感動を呼ぶ作品 2002/3/12

先日、あるカメラ誌の方々を交えて話す機会があった。これからのカメラ誌の方向性や、魅力ある内容とは何か。そのためには、今何をすれば読者の支持を得られるだろうか、などと話し込んでいた。その話しの中で、僕は見られなかったある写真家の個展作品に話しが及んだ。その写真家を知る人達は、撮影現場の自然の厳しさを思い、賞賛を連発していたと言う。しかし、カメラ誌に掲載されたり展示されていた作品からは、それらの人達が絶賛するほどの感動は受けなかったと言うのだ。何故だろうか。自然写真だけではなく、撮影現場を想像できる作品には、作品内容よりも撮影条件を考えた評価をしてしまうこともあるからだろうか。

作品展などを見る人達は、全てが写真のプロか、写真業界の人か、写真愛好家ばかりではない。撮影のプロセスなどを知らない人は、それらの条件は全く念頭にない状態で鑑賞する。だから、その作品から発散される「感動」を素直に受け止めることも出来ると思う。写真界のネイチャーフォトブームは結構続いているようだ。カメラもフィルムも良くなり、よい出会いとチャンスに恵まれるとプロとアマとの作品の出来映えの差は少なくなる。ドラマチックな出会いを求めると、その地にいて毎日のように自然を眺めている人にはプロと言えども及ばないこともある。一方で、スタジオワークなど、技術がアマでは到底太刀打ちできない分野では、プロとアマとの差は歴然としてくる。感動とは違ったことだが、考え様によっては共通部分もある。ドラマチックな出会いがなくとも、理論や技術が同等に備わってこそ表現力のある作品創りに結びつき、その作品の中に誰をも感動させる、魅力のある描写が出来ると思っている。また、本当の感動とは一瞬のものではなく、持続性も永いはずだ。その方は、そのようなことを言いたかったのかも知れない。

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