Toppageへ
 No.104

三輪 薫(みわ かおる)


No.104 『写す』/プロ作家の作品 2002/3/15

カメラという道具で撮る「写真」では、絵画などのようにタッチなどを自分独自のもので表すのは難しい。1枚の作品を見て、作者がわかれば凄いことだと思う。しかも、特別な被写体ではなく、花や自然なら尚更だ。音楽などでも、奏でられる音を聴いて演奏者が分かれば凄いことであるのと同じである。

以前、あるカメラ誌の編集部で、作者の名前を伏せた巻頭掲載の口絵作品を見せられ、「三輪さん、この写真どう思う?」と聞かれたことがあった。正直に、「巻頭口絵だからプロなんだろうけれど、どうしてこの作品が?‥」と返事をしたことがあった。作者は評価の高いプロだったが。発表する作品が多すぎたり、たかがカメラ誌と言う安易な気持ちが働いていたのか。掲載を依頼したその作家から出された作品に対し、その作家の担当者の作品を見る目が低いのかもしれないし、疑問に感じても返す言葉が見つからなかったのかもしれないと思った。もし、そうだったら残念である。同僚の編集者でさえ疑問に感じ、僕に感想を求めてきたくらいだからである。「人の振り見て我が振り直せ」の教訓を、改めて噛み締めたものである。

しかし、しかし、本は売れてなんぼの世界。やはり、作品内容だけではなく作者の名前も本を売るためには大切で、これが現実と思う。賢い読者が増えればそのような作品を掲載した本の魅力は少なくなり、販売数に結びつき、結果として自分達の首を締めることになる。だから、出版する側からも『感動を呼ぶ作品』にも書いたような見解が出てくるのだろう。作品を発表する我々も出版社側も、絶えず緊張感と危機感をもっても臨むことが必要と思っている。

戻る