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 No.145

三輪 薫(みわ かおる)


No.145 『生きる』/しつこい性格とこだわり 2002/10/30

売り込みと商売が得手ではない僕は、一旦依頼されたことには徹底的に拘り、時間が許す限り懸命に考え抜く性分である。編集者やデザイナーなどにとっては嫌なタイプかも知れない。此の点は随分前から指摘されている。しかし、自分としては何事にも適当にとは出来なく、何時も本音で勝負したいと考えている結果のことなのだ。この僕の性格を分かってくれる人には心優しい方が多く、このような嫌な性格の持ち主でも何とか付き合って頂いているのが現実であるような気がする。妻にも時々言われている。「時には程々にしたら」と。僕には直接言わないが、妻にそれとなく助言してくれる、嬉しく親切な編集長もいる。

先日も僕の個展の開催方法について、何人かの人から「三輪さんは拘りすぎだ」と言われた。撮影は勿論のこと、作品のセレクトに始まって、プリントの仕上げ、額の選択、マット加工、マットの余白寸法、ギャラリーのことなど、全てに渡って妥協はしないからだ。一方では、以前書いたかも知れないが、僕のこのような拘りを評価してくれる方もいる。何事にも拘ることは正しいことかどうかは分からない。自分に与えられた仕事や自分の作品に対する拘りを、適度にしておくバランス感覚も必要かも知れない。

世間的に見ると一線を越えることが多いのだろうか。だから嫌がられることもあるのだろう。現実には、僕の拘りへのしつこさが面倒に思ってしまうのかも知れない。「このレベルの仕事なのだから、この辺りで手を打ちましょうよ」、と言うのが本音かも知れないとも思っている。

他人に頼まれることも同じで、最近ではここ数年、年間に関わる写真展は10回どころではなく、自分の膨大な時間を費やしている。僕にとっては無駄な時間とは言えなくとも、残された自由に使える時間を減らしている現実には変りはない。しかし、他人のことだと言って適度に済ますことが出来ないし、関わることを感謝されると断りきれないし、喜んでいただけるのは僕にとって嬉しいことでもある。しかし、毎回ながら自分の個展が何時も後回しになり、最後は焦ってしまう。今回の9月の個展も同様であった。他人の写真展は気になって、自分の個展より先の写真展の準備を終えてから取りかかった。

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