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 No.89

三輪 薫(みわ かおる)


No.89 『生きること』/チャリティー写真展 2002/1/15

年末にプロの写真家の団体が企画した「チャリティー写真展」を、有楽町駅前の国際フォーラムや銀座の富士フォトサロンなどで大々的にやっていて、新聞にも報道されていた。僕は個展の真っ最中で見そこなってしまったが、富士フォトサロンでは、キャビネサイズか六切りの作品を額装し、1万円で販売していたそうだ。しかし、知人から次のようなEメールが入った。

「その作品のひどいこと・・・、もちろん、良い作品はあるのですが、それにしてもひどい。」「売ること、そしてその売上金を役立てることが第一の目的なのに、どうやっても売れそうもない作品ばかりが並んでいて・・・。売れているものからその場で買い手に渡すようで、額が外されていました。それでも、あまり売れていなかった・・・。なんて独りよがりの人たちばかりなんだろうって、思いました。」と。

見解の相違は様々だろうが、神戸大地震の際にも同じような写真展の企画があり、僕にも出品依頼が来たが参加しなかった。だからだろうか、巷では僕のヒンシュクを買うような噂が立っていた。その人達は何故に僕が拒否をしたのか理解できなかったようだ。答えは簡単である。前述のような作品が多く集まり、販売しようとしても必ずしも売上には結びつかず、浪費を重ねるだけだと予測したからである。

本心で寄付をしようと思うのなら、作品を創る金額をそのまま寄付金に充てたほうが無駄な出費も手間も掛からない。出品作品が多ければ多いほど結果的には高額になる。プリントや額装にはそれなりのお金が必要で、売れなかったら無駄となるのは誰もが分かっていたはずである。では、売れなかった作品をどうしようとしていたのだろうか。神戸市に寄付するのだと言う話しを耳にした。震災で右往左往している所に誰も買わなかった作品など寄付されても困るだけで、被災者の立場や心情を分かっていないと感じた。余りにも情けない話で、僕は1枚購入した。作品を売る側よりも買う側のほうが被災者にとって嬉しいことだからである。その作品はいまだに飾ることもなく、どこにしまったかも覚えていない。出品され売れ残った作品は何処に行ったのだろうか。出品者がお互いに購入していたら、全てが売上に結びついたはずだ。

僕が提案したのは、「プロの写真家、カメラマンは一律に1万円を寄付しよう!」、だった。勿論、その他でもボランティアや寄付を行うのは自由でよいことである。日本には少なくとも数千人の団体所属のプロがいる。僕のような何処にも属していない立場の者を含めると、もっと多くのプロがいる。総額は少なくとも数千万円以上になったはずである。お金持ちの写真団体は勿論のこと企業も多くあり、それなりの金額を軽く達成できただろう。しかし、現実は一体いくらくらいになったのだろうか。今回もまた、同じことが繰り返されたと思っている。

勿論、このような企画によって巷の人達への感心を呼ぶ意味は大きい。しかし、このような企画は実を多く伴わないと思っている。

神戸大地震の後、作品主義のミニグループ展を開催した。この時には、展示した作品の売上の一部や、僕や他の出品者のポストカードの売上の全額を寄付金に充てた。チャリティーのための写真展ではなかったが、それでも結構な金額が集まった。しかしである。提供してくれたと思っていたある写真家のポストカードの代金は、大した額ではなかったがしっかり出版社から請求され、驚いたものである。

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