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 No.92

三輪 薫(みわ かおる)


No.92 『生きること』/焦らず、急げ 2002/1/20

先日、新聞のコラム欄で「ゆっくり急げ」という言葉を見つけた。ラテン語の訳の「ことわざ」で、『急ぐべき時には急げ、ゆっくりすべき時にはゆっくりしろ』と言うことだそうで、要は判断とバランスの問題だと言う。

写真愛好家のクラブや写真教室などで「焦らず、急げ」と以前からアドバイスをしてきた。このような所に来ている人の多くがご年配で、各自の目標に向かって作品創りをするにも、若い人のようにたっぷりとは時間が用意されていないからである。しかし、焦っては足元が見えなくなり、自分自身を見詰める目が怪しくなり、正直な自分を写した作品を撮れなくなる。今、何をすべきかを考えることが大切と言い続けてきた。個展の開催にしても生涯1回ではなく、何度も開催することにより自分自身が見えてくるものだ。だから、焦らず急いで撮り、発表した作品を会場で見詰め、次への作品創りへと励むのが大切と言い続けているのだ。

一昨年から精力的に個展を開催している水戸市の黒田一郎さんは70才を越えた人であるが、最近は毎年のように新作を個展で発表し続けている。まさに「焦らず、急げ」を実行している人である。実に若若しく、クラブやワークショップ「昴」で作品創りに没頭し、自分自身の研究に勤しんでいる姿を見るのは気持ちがよい。

僕の日常生活にも、まさに当てはまることで、原稿などの締切に追われながらも、今すぐにしなくてもよいことに結構な時間を割いてしまうことも多いようだ。睡眠時間がついつい少なくなってしまうのは、急ぐ仕事を先送りしてしまったことが原因であることも多い。この言葉は、誰よりも自分に言い聞かせなくてはと、反省した次第である。今年に入り、夜明けまで起きていることは絶対しないと誓ったにもかかわらず、この誓いを破っていることも多い。全て、このような「先送り」が原因である。妻にも子供達にも、生徒さん方にも、心配とお叱りを頂戴し続けている。コラムニストの方同様、「急ぐべきか否かの判断は難しいもの」だが、今年こそ心したいものと思っている。

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