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 No.93

三輪 薫(みわ かおる)


No.93 『生きること』−35/お酒 2002/1/24

ここ何年か外出先でお酒を飲む機会が格段に減っている。不景気風のせいもあるが、寂しいことには違いない。「お酒を飲むために飲む」と言った過ごし方をする余裕がないからでもある。悲しいかな、勤め人の方のように我々自由業の者は定められた休日はなく、不景気のこの時代には年中無休で働くしかないとも思っている。

しかし、昨年の個展以来、今年に入ってもお酒との付き合いは不思議と多い。20年ほど前に突然仕事を辞めて家族が困惑している時、義理の兄もバックアップしてくれたことを後で知った。その兄が停年となり、ほんの少しの感謝を込めて企画した八丈島の正月では、毎日深夜まで楽しくお酒とも付き合った。個展「風色」で集まってくれた知人友人や「わの会」会員の方々とも、東京展や名古屋展で酒を飲みながら楽しい一時を過ごせた。先週は写真クラブやワークショップなどの例会の後の新年会が連日続いた。しかし、心許せる人達と飲むお酒や、妻と二人で取材先などで飲むお酒もいいものだと思っている。

若い頃はお酒を余り飲めなかった。しかし、写真の世界に入り、「酒を飲むのも写真の修行」と否応無しに飲まされることが多くなり、自然に強くなってきた。鍛えても飲めない人もいるようだが、僕は歳と共に母親の家系の血が蘇ってきたのだろうか、妻も驚くように随分強くなった。酒を飲むことや、その場を共有することは楽しいことである。写真の世界に身を置いてよかったと思っていることに、お酒を嗜めるようになったこともある。酒を飲みながら交わす会話も楽しいし、会話の中から発展してきたことも多い気がする。作家などが溺れるほど酒にのめり込んできたのは、良いも悪いも作品やその作家の生き様に反映されているだろう。

夜明け頃まで仕事をしていると、何故か目が冴えてしまう。だから、皆さんが起きる頃にビールを一気飲みしてベッドに転がり込む。このようなことが日常となり、益々強くなって行くのだろうか。

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