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 No.159

三輪 薫(みわ かおる)


No.159 『創る』/写真の原点を大切にしたい 2003/1/1

現在ではモノクロ写真の需要は少なく、仕事上で依頼されたり、要求されることはほとんどなくなっている。それでも捨てきれない魅力が、モノクロ写真の世界には秘めている。モノクロ写真の魅力は、暗室処理によるものだけではなく、デジタルによってプリントアウトした作品にも可能性はあるだろう。

現在、愛用者が少なくなり、大手のメーカーはファインプリントに出来るバライタ印画紙の銘柄を少なくしている。この現実を考えると、多様な印画紙があるから表現が可能であったファインプリントの表現世界を、デジタルなら何とか何時までも存続させることが出来るような気がしてきた。デジタル写真のプリントは紙を選ばない。何でも可能と言えるくらい、適用の紙や他の素材が多くある。プリントの耐久性が高くなってきた今では、考えようによってはデジタル世界の方が、作画を素直に引き出してくれるのかも知れない。だからこそ、アナログの権化と自負する僕も、デジタル世界も研究し続けなければと、一大決心で臨んでいる。

しかし、モニターの画面を見ながらでは得られないものが暗室作業にはある。引伸機とレンズ、印画紙、薬品と液温など、様々な選択と組合せによって微妙な違いが生まれ、作品の作画と表現を支えてくれる。アナログでの作業は、デジタルとは違った思考を生む。長年の経験と蓄積されたデータによって、撮影からプリントまでの一貫性によって生まれ、生み出そうとする思考が起き、表現に結びつくからである。

この魅力は捨て難く、多分一生アナログのモノクロ世界と関わり続け、そこで得たものは、デジタル世界にも生かすことに繋がってくると信じている。今の僕にとってモノクロとの付き合いは、健康を害し、撮影できる期間を短くするかも知れないが、それに余りあるものを自分に与え、発見出来るものもあるだろう。暫く御無沙汰していた8×10インチ判などの大判の世界にも、今年は再度取り組んで行きたいと思っている。

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