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 No.161

三輪 薫(みわ かおる)


No.161 『生きる』/本物志向 2003/1/10

世界から見る現在の日本人は、お金は持っているが文化程度の低い民族と映ってはいないだろうか。バブルが日本人全体に金銭欲、物欲などを必要以上に身に付けさせ、精神的にも大切な心や生き方を放棄してしまったかに見えるのだ。テレビを観ていると、「お金を気軽に貸しますよ」と言う甘い言葉をささやき、お金を借りることがファッション、カッコイイことのような錯覚を受けるコマーシャルが日中堂々と放映されている。お金を預けても無金利同然のこの頃では、このようなローンは高利貸しどころではない、超高金利なのにである。ここにはテレビ局も文化の担い手である意識を放棄し、お金さえ稼ぐことが出来れば、何でもあり、と言った本音がちらつく。いや、丸見えである。実に情けない。尤も、このように貸し放映する企業が、日本有数の営業利益を生み、自己破産を生む背景には、物欲に走る己を知らない人達が多くいるからでもある。

今、超お買い得感の高い、安い価格で販売している店が多くなっている。色々な生活用品も修理するより買い換えた方が安く済む変な時代である。だから、物を大切にしない風潮がはびこってしまう。束の間使うことが出来ればそれでよい、と言う考え方は改めるべきだと思うし、賃金の安い国で作ったものばかり買っていると、日本の企業が潰れてしまう。安物を多く買うか、本物を少なく持つかの選択を迫られるが、やはり本物には安物にない魅力がある。何時まで使っても飽きの来ない、使いやすい本物は、生活必需品の道具として考えても丈夫で長持ちする。

現在アウトレットが大流行で、正月寄った軽井沢駅前にある「プリンス ショッピング プラザ」は109店舗も揃っているためか、連日凄い人出であった。超高価なブランド品でも5割引きなどもあり、お買い得感は高い。以前買った靴などは、大変履きやすく丈夫で、現在常用している。撮影用の衣類なども、我が家に近い南大沢のアウトレットで買うことが多くなっている。多くの店舗が一箇所に集まっていると、結果的にも欲しいものを見つけるのも楽である。長く愛用するには、やはりブランド志向ではなくても、着心地や保温性や透湿性に優れたものがブランド品には多い。このような品は、材質、作り、デザインなど、飽きが来ず、丈夫で長持ちする。安物を多く揃えるより、半年や1年遅れの物でも、本物はよく、結果的にも得するものである。

カメラなども同じで、30年近く前に買ったハッセルやローライなどは、道具としての実用価値は言うまでもなく、本物だからこその美しさを今も失ってはいない。

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