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 No.185

三輪 薫(みわ かおる)


No.185 『写す』/銀塩写真とデジタルフォト 2003/6/29

現在デジタルフォトの世界にも関心が深いが、僕は大半銀塩とデジタルの両方撮っている。これからも同じ姿勢だと思う。アナログをメインにしているからデジタルも撮る、アナログで出来ないことをデジタルで、という姿勢である。テスト出ししたものを見ると、同じ僕が撮っているのに、やはり違う。銀塩とデジタルの違いを深い視点で見つめ、共に利点を探りながら進めようと考えている。そうでないと、作家として墓穴を掘ってしまう気がするのだ。

7月1日から京都で開催のデジタルプリント展は、デジタル世界での表現の可能性を知りたく、確認したくて、まずフィルムをスキャンして行うことにした。デジタル世界を研究する順序として、フィルムと銀塩ペーパーで引き出せなかったことを、銀塩で培ってきたものを全てデジタルに生かして行いたいと考えたからである。フィルムのスキャンも専門的なドラムスキャンで依頼したが、実に凄い。さすがドラムスキャンと言う仕上がりである。出力も、アメリカなどの版画業界で公認されている工房と同じシステムのエプソン認定のラボで行っている。近代の機器を道具として使いこなす、まさに「刷師」と言うにふさわしい、日本でもトップクラスのオペレーターの方にお願いできた。まだ、このような公認されたラボは、日本では片手で数えるくらいしかないと聞いている。

今回プロラボで出力のプリントはEPSON PiezoGraphと呼ばれるもので、エプソンが別途契約を取り交わした認定ラボラトリー(工房)によって制作された作品の証として用いられ、それ以外で出力されたものはPiezoGraphと呼称されている。このクオリティーの高いテクニックを、和紙に重ね、僕の心を託したのが今回の個展である。日本の繊細な自然を、日本画的な雰囲気を醸し出させることで引き出したいと考えたのだ。

定期的に開催している京セラ・コンタックスサロン銀座展での大判プリントと同様、今回も大判の伊勢和紙と越前和紙を使って展示する。展示方法も、作画と表現にふさわしいように、木目板貼り、長尺の和紙を吊した掛け軸風、桜材額装、行灯仕様も数々展示。また、美術館や博物館などにあるようなガラステーブルにも、当方のスタッフが出力のPiezoGraphで、秘蔵の伊勢和紙も含め、手漉き和紙の風合いを十分生かした水墨画や墨絵的な作品をかなり多く展示する。

来年1月のキヤノンサロンでの個展は全てデジタルで行い、今回の個展との違いを確認したいと考えている。銀塩での作画や表現で鍛えたものを、デジタルで如何に生かせるかがポイントである。何事も自分で実行して初めて確認できるものである。その上で表現目的によってアナログか、デジタルかを選べばよいと考えるわけだ。そうでないと作品が作例写真的になり、表現内容も軽く見えるような気がする。作品は自分の分身である。さらけ出して恥ずかしくないものを撮り続け、発表したい。僕自身や周りの人へよい刺激を与えられるような作品創りや生き方を作品展を通して示すことが出来れば本望である。

今日は僕の55歳の誕生日。区切りのよい数字に見合った写真人生になるかどうか、今回の個展が示してくれそうな気がする。

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