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 No.193

三輪 薫(みわ かおる)


No.193 『生きる』/いつまでも愛着をもてる服 2003/8/25

先日、ここ数年注目されているファッションデザイナー皆川明氏の仕事ぶりがテレビで放映され、評価が高まってきたデザインへの考え方などを伝えていた。この方のポリシーは、「流行を追うのではなく、いつまでも着続けて欲しい服を作ること」だった。素材や織りに拘りながら布を新にデザインして作り、その布の素材やデザインを生かし、長年愛着をもって着ることが出来る服作りを目指している。ファッションには疎い僕であるから世の中の事情はよく分からないが、業界自体が主導権を握る流行つくり、儲けを優先する姿勢とは一線を画して臨んでいる。

業界が提示して押し出したその年のファッションカラーやデザインが、全ての人に似合うとは限らない。しかし、そのファッションが自分の選択よりも業界の誘導に沿っていても疑問を感じなく、その流れに付いて行く、流れに乗り遅れないことを優先している人も多い気がする。女学生がいまだにはき続けているルーズソックスと同じだ。僕から見ると、人によってはだらしなく見えることおびただしい。細身のダンサーのような人にこそ似合うファッションなのだから。しかし、同じような格好をしないとイジメの対象になるとも聞いている。不思議な世の中である。

人にはそれぞれに個性があるはずだが、同じようなファッションではつまらないし、流行を追えば時代的や視覚的に古くなり、結局は着ることもなく捨てられてしまうことになるだろう。実に勿体ない。よいものは末永く愛用したいものである。これらのことは洋服や着物だけではなく、あらゆるものに共通したことだと思っている。先日銀座の日産ギャラリーで、初代のスカイラインが新車と共にメインの場所に展示されていた。好みもあるだろうが、古さを感じるどころか、実に新鮮なデザインに思われたから不思議である。最近の車のデザインは、何処のメーカーも丸みを帯びた似たものが多いような気がする。高額な車だから、少なくとも10年は乗り続けたいと思って購入するのが普通である。しかし、数百万円もする車ですら、数年経つと何だか古さを感じて飽きてしまうのは、やはり普遍的な実用価値のあるデザインではなく、その場限りのデザインであるからだと思っている。ドイツのベンツやBMWなどは、車種が違っても基本的なデザインは同じように創られているが、だからと言って没個性的かと言えばそうではない。この辺りの考え方に、メーカーのデザインへの考え方や姿勢が表れていると思っている。皆川明氏の姿勢はこれらと似ているかも知れない。

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