Toppageへ
 No.196

三輪 薫(みわ かおる)


No.196 『写す』/デジタルプリントの可能性 2003/9/13

銀塩プリントに比べ、デジタルプリントのよさと魅力は、用紙に限定されないことである。最近のプリンタは、CDなどのように結構厚みのあるものでもプリントできる。僕はインクジェットプリンタで銀塩の世界と同じことを行うことには全く興味がなく、7月に京都で開催した個展「風香」の作品は、様々な銘柄の伊勢和紙と日本画用の越前和紙を使って出力した。伊勢和紙は「伊勢和紙photo」の銘柄などでインクジェットプリンタ用として発売されている。この他にも、版画用の紙や、身近にある様々な紙を使ってみても面白いだろう。

銀塩プリントでは、和紙に乳剤を塗布して独自のプリントを行っている人もいる。しかし、耐久性には問題があるようだし、カラーでは不可能だろう。インクジェットプリンタは、カラーでも黒白でも、気軽に楽しめることが嬉しい。また、顔料インクのプリンタで出力のプリントは、銀塩の印画紙に迫る耐久性を持つようになってきた。

一般のフォト紙的な用紙に比べ和紙などへの出力は結構難しいが、思わぬ色合い等が出ることもあり、普通の銀塩ペーパーとは一味違う紙の風合いを生かした表現に結びつく。人とは違った楽しみ方をするのもよいものである。版画用などの紙にも言えるが、触った感触や見た目の印象も素敵で、魅力がある。インクの臭いなども気になったことは全くない。インクの吸い込みのせいだろうか。

個展「風香」の壁面に展示のプリントは、日本に3つあるエプソン認定ラボの第一人者の方にお願い出来た。しかし、僕の注文や期待感が高すぎたせいか、和紙への出力は難しく、テストプリントを始めて本番プリントを仕上げるまで、足掛け3ヶ月掛けた。このように手間を掛けたデジタルプリントは、銀塩と比べ料金は驚くほど高く、自腹では僕も手が出ない。しかし、出来映えは実に見事で満足感の高い作品になっている。だから、これだけの時間を費やしての出力では、当然の料金かも知れないとも思っている。

この個展「風香」は東京でも開催することが決まった。六本木にあるAXIS GALLERYANNEXで、会期は11月15日から23日である。是非、会場に来ていただき、和紙に出力したインクジェットプリンタによるプロのデジタルプリントの素晴らしさと作品創りへの可能性を、生の目で見て確かめて欲しい。デジタルのプロラボの技術やレベルの凄さも、はっきり分かるだろう。そして、アナログの権化と自負する僕が、何故和紙とインクジェットプリンタを組み合わせた作品創りをしているかも、作品を通して理解していただけると思う。
 伊勢和紙(大豐和紙工業(株)):http://isewashi.co.jp/
 越前和紙((株)杉原商店):http://www.washiya.com/
 AXIS GALLERY ANNEX  http://www.axisinc.co.jp/

戻る