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 No.206

三輪 薫(みわ かおる)


No.206 『写す』/愛用のフィルムや印画紙の行く末 2003/12/27

一昨年KM(コダクローム25)の製造が中止となり、ISO25タイプのコダクロームはこの世から消えてしまった。この時、最後のKMを200本ほど買い込んだ。本当は少なくとも500か1000本も買い込みたいくらいだったが、保存を考えてそれ以上買い込むのを諦めた。しかし、今は後悔している。何を置いてももっと買い込んでおくべきだったと。それ程素晴らしいフィルムなのだ。PKMがなくなった時には400〜500本買い込み、冷凍冷蔵庫を新に買って保存をし、大切に使っていた。

以前京セラのコンタックスカレンダーの指名を受け、その年のカレンダー展の最高の評価を受けた時の作品「樹奏」は大変好評で、その作品は大半がコダクロームだった。デザイナーの方が、僕が見せた多くの作品から第一セレクトした作品の大半がコダクロームで、エクタクロームやフジクロームの作品の多くはセレクト外のものになっていた。勿論、受賞したのはコダクロームの作品だからではなく、作品内容と装丁・デザインなどの評価を受けてのことである。このカレンダーは贅をつくした仕様で、写真家なら一度は登場してみたいと願うだろう。しかし、コダクロームが表現を支えてくれたことには違いない。

エクタクロームパンサーの時も同様に買い込んで長く大事に使っていた。ウォームタイプのパンサーXの時は製造中止を知らなく、分かった時にはもう入手不可能だった悔しい思い出がある。ファインプリント用のバライタ印画紙の中で最も愛用しているエクタルアが製造中止に追い込まれた時は、フィルムよりもかさばるので長年お付き合いしているコダックラボの冷蔵庫に保管をお願いしていた。この印画紙は藤井秀樹さんもご愛用で、会う度に譲って欲しいと言われている。しかし、僕がファインプリントを諦めない限り使い続けたい印画紙で、藤井先生と言えども譲るわけにはゆかない。僕の好きなフィルムや印画紙が何故かこの世からなくなってしまう。寂しく悲しいこと、この上ない。

何故このようになるのだろうか。僕の好みが変なのか、多くの人とは違っているからだろう。しかし、写真の世界もデジタル化が凄い勢いで進み、益々銀塩のフィルムや印画紙の需要が減ってきている。プロラボも閉鎖されたり、新しい銀塩カメラの製造も頭打ちになっている。来年はもっと心配な状況になるかも知れない。

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