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 No.212

三輪 薫(みわ かおる)


No.212 『写す』/ネガプリントの可能性 2004/2/1

現在、デジタル時代を迎えているが、写真愛好家でもまだまだリバーサルフィルムが多く愛用され、ダイレクトプリントが大勢を占めている。僕の個展プリントをお願いしているプリンターの方の話しでは、ネガプリントペーパーによる作品創りが少なくなっていて、プロラボでさえネガプリントをきちんと焼ける人が少なくなってきたらしい。

グラデーション再現が豊かなのはネガフィルムである。次はデジタルだと聞いたことがあり、最もコントラストが高くなるのがリバーサルフィルムであると思っている。僕らは仕事で印刷をするためポジフィルムを使うことが大半になっている。しかし、僕の個展ではそのポジからダイレクトにプリントするのではなく、インターネガを作成し、ネガ用のペーパーにプリントすることが大半である。ポジからのダイレクトプリントは色や明暗のコントラストが高くフィット感が得られないからだ。

ポジフィルムのラチチュードはネガに比べて狭く、ネガを作る時にグラデーション再現を調整してプリントしている。つまり、ハイコントラストなグラデーションであるポジを、インターネガにする段階でポジよりもグラデーションを幅広く滑らかに作る。その結果、ネガフィルムと同様とはゆかなくても、かなり近いところまで引き出せる。そのポジフィルムの再現性と期待するグラデーションによってネガの濃度を変え、時には部分的にも濃度を変えたネガを作成することも可能である。つまり、ポジフィルムの色合いを生かしながら、ネガフィルムの再現性でクオリティーの高いプリントに仕上げる訳だ。

しかし、このインターネガが数年先には製造中止になるという。使われなくなってしまったものは消えて行くのは仕方がないが、僕は困ってしまう。銀塩のプリントもラムダを使ったデジタルプリントに集約されてしまい、高度な技術を持ったプリンターによる手焼きはいつの日か淘汰され、なくなってしまうのではないかと心配している。

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