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 No.213

三輪 薫(みわ かおる)


No.213 『写す』/ネガプリントの可能性 2004/2/1

デジタル時代が進むとポジフィルムは必要でなくなると聞いたこともある。スキャナーでフィルムを取り込み、その後で様々な加工を経ると、多銘柄のポジフィルムの色合いなどが引き出せるからだと言う。しかし、ネガの場合は基準となる色合いは自分で決めねばならず、ポジフィルムのように銘柄によって決められた色合いを基にして、プリント時に希望通りに調整するというわけにはゆかないのが難点でもある。

デジタル写真も同様で、ポジフィルムのように撮影後に色が決定されることはなく、自分で決めなければならない。余程色に関する感性が豊かでないと難しい作業である。印刷などへの入稿も、撮影後のデータのままでは相手に自分が求める色が伝わらないと思う。モニターによっても色が違って再現されるからである。色見本を用意するだけ時間も掛かり実に大変である。

僕はよく理解していないのだが、プリントに関しては「プロファイル」なるものがあって、それを使うとモニターで見た感じと設定されたプリンターから出てくる画像の感じが揃ってくる。僕が愛用の伊勢和紙には、大豐和紙工業(株)のサイトに無料で公表されていて、ダウンロードすれば、ある程度までの仕上がりを期待できる嬉しいものだ。今までの苦労が何だったのかと思えるほど簡単に、きれいな和紙プリントができるので是非試して欲しい。和紙へのプリントは難しいと思っている方にはお奨めである。

*伊勢和紙 http://isewashi.co.jp/

昨年開催の「風香」展では、645判のリバーサルフィルムをドラムスキャンして和紙にインクジェットプリンタで出力したが、銀塩ペーパーにプリントした8×10インチ判カメラで撮ったような再現性を見せてくれた。現段階では、デジタルカメラの進歩が著しいとはいえ、まだまだ銀塩世界の方が勝っている点も多い。しかし、印刷などの利便性だけを見ていると、もうデジタルカメラで十分という気がする時代になっている。まずは35ミリ判のフィルムがこの世から消え去るのだろうか。フィルムメーカーでは、販売のターゲットを大中判カメラ用に絞る時代が意外と早く来るような気がする。しかし、この分野の愛用者はたかが知れている。いつまで、どれだけの銘柄のフィルムが生き残ってくれるか気になってしまう。

しかし、そうこうしている内に、大中判の世界ですらデジタル分野が大勢を占める時代になってしまい、全てのフィルムが消える日が来るのではないかと心配になる。地下鉄の車両ではないが、考えたら眠れなくなってしまいそうだ。

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