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 No.215

三輪 薫(みわ かおる)


No.215 『旅』/ガストホフ 2004/3/3

ペンションよりもワンランク上の「ガストホフ」と呼ばれる宿がある。発祥の地はドイツだそうで、全国にはまだまだ少ないようだが、全室の1部屋の最低面積と部屋付きのトイレ/洗面所/風呂かシャワールームが義務付けられていて、名ばかりのペンションとは大違いである。僕は1軒しか知らないが、部屋もゆったりとして、お客をお客として大切に扱い、もてなしてくれる嬉しい宿である。

僕が定宿としている北海道・屈斜路湖畔のガストホフ「ぱぴりお」は、ご夫婦だけで営業している。夜の9時頃到着しても気持ち良く迎えてくれ、作り立ての暖かな夕食がテーブルに並ぶ。しかも、食の進み具合を測ったように次の料理が運ばれてくる。全館床暖房で温泉のお風呂も大きく、こんなに嬉しいことはない。多くの人に知って欲しいとカメラ誌などで紹介したら、その記事を見た人達が次々と来てオーナーに感謝された。同様の気持ちで迎えてくれる民宿なども同じだ。

宿の紹介をする雑誌は数々あるようだが、僕が知る宿に言わせると掲載料金を取る雑誌ではそれ程の告知効果はないと言う。何故なら、読者はその辺りのことを心得て読んでいて、広告的なものでは期待を裏切られることもあるということを読者が知っているからだと言う。僕が紹介したような記事は生の情報を伝えているから、掲載と同時にお客が来ると言っていた。そう言えば、以前カメラ誌の取材で、担当編集者が知り合いの旅行雑誌の編集者に紹介された宿に泊まったことがあった。その雑誌掲載によれば地域ではトップクラスのお奨めの宿だったが、実際には二度と泊まりたくないひどい宿だった。このような宿は、今の時代に生き残るのは大変だろう。以前、到着時間を知らせ、その時間に着いた真冬の裏磐梯に知人と泊まった民宿がある。客は僕等二人だけで、しかも現地の方の紹介だった。しかし、味噌汁とご飯以外の全ての料理が冷めていて、心も寒々としたものである。民宿とは本来家庭的な心のサービスを売りにしていたと思う。ペンションも同様のタイプだと思うのだが。

明日から行く旅行社主催の1泊撮影会で、撮影行程の関係で今回は昼ご飯のみお願いしている僕の定宿、玉原高原のペンション・ツツミスクウェアは、奥さんの心を込めた手料理が素晴らしい。撮影だけではなく、料理や夕食後にワインを飲みながらの会話や、冬では薪ストーブの暖かな火も楽しみにして通っている。

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