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 No.217

三輪 薫(みわ かおる)


No.217 『生きる』/不景気時代の料金 2004/4/6

現在の日本は不景気風が吹き、特に観光地によっては宿も閑散としているところもあるようだ。だから、かなりのダンピングをしながら営業している所もあり、毎年毎年、一軒一軒と営業を止めるホテルが出る観光地もあると聞く。営業するホテルも、バブルの最中に比べ、同様かそれ以上のサービスをしながら格安なのも不思議である。

これは航空業界も同じで、現在撮影に出掛けるときに利用しているホテル宿泊付きのパックなど、以前では信じられないくらいの格安で販売されている。仮にホテル代が無料と考えても、通常で購入する往復運賃より安いことも多い。

レンタカーも同様で、以前はアメリカやカナダなどの海外で借りる料金とは比べようがないほどに高かった。今でもまだまだ高額に感じる。では、あの時の料金は一体何だったのだろうか。需要と供給のバランスが存在するとは言え、企業努力もせずにお客からお金を搾り取っていたということになる。

我々の写真界にも同様のことがある。僕が弟子入りした30年ほど前に師匠から聞いた不景気になった時のこと。仲間の多くが撮影料を下げたにもかかわらず、先生は同じか逆に値上げしたと言う。仕事量は減ったが、結果的には収入も以前と変わらず、逆に自由な時間が増えたと言う。作家としての作品創作の時間が増えてよかったそうだ。コマーシャル写真とは言え、工場で量産される製品とは違い、カメラマンによって写真の出来映えが違う。ギャラの差は技術やセンスの差である。なのに大工などの職人さんの日当も、その人の技術を度外視して協定されているのは実に不思議だ。

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