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 No.223

三輪 薫(みわ かおる)


No.223 『写す』/インターネガ 2004/5/31

昨年だったか、僕の作品プリントを全てお願いしているラボの方から「三輪さんがプリントするときに作っているインターネガが、数年先には製造中止になるとメーカーから連絡がありましたが、どうしますか」と電話を受けた。どうすると言っても、なくなれば仕方がない。

僕は仕事柄も含め、ほぼ100%リバーサルフィルムを常用し、個展を主体にして作品を発表しているが、プリント作品は全てネガプリントで行っている。リバーサルフィルムをネガ用のペーパーにプリントするには、インターネガの作成が必要で、このネガがこの世から消えてしまうとは困ってしまう。しかし、愛用者が少なくなれば採算も取れず、メーカーとしては作りたくないのは当然だろう。

今やリバーサルフィルムからのプリントの大半はダイレクトプリントやデジタルプリントに移行してしまった。主流のダイレクトプリントは、色合いも鮮やかでコントラストが高く再現され、インパクトの強いプリントが支持されているからだろう。しかし、色が鮮やかでインパクトがあれば、それでよいのだろうか。

写真は、グラデーションやトーン再現のきめ細かさが絵画などよりも高いのが特徴である。この豊かなグラデーションの再現にはダイレクトプリントよりもネガプリントのほうが優れ、色合いも自然で優しいと思う。しかし、この素晴らしい再現性を生かしたプリントを選択するのが少数派になってしまったとは残念である。だからこの世からインターネガがなくなることに繋がってくる。プロラボでさえ、ネガプリントをまともに出来るプリンターが少なくなってきたとも聞いている。

それより、最近では銀塩プリントの需要が少なくなって、プロラボも苦戦していると聞く。僕が個展作品の全てのプリントをお願いしていた(株)ドイ・テクニカルフォト部も、デジタルプリントに主流を置くため、手焼きの銀塩プリント部門を縮小した。そのために、この部門にいた人達が手焼きの銀塩プリントの専門ラボ「フォトグラファーズ・ラボラトリー」を新たに創設し、活動を始めているが、現在では仕事も順調のようであり、嬉しいことだ。

今日から銀座のキヤノンサロンで開催される黒田一郎写真展「水の彩り」は、多様な銘柄のリバーサルフィルムを駆使した撮影だが、展示作品の全てがインターネガを作りネガ用のペーパーで「フォトグラファーズ・ラボラトリー」でプリントしている。

以前のコダクロームは、新緑や深緑だけではなく、紅葉も雪景色も水なども何でも撮れ、期待を裏切らないフィルムであった。しかし、現在のコダクロームは、時としてではなく、結構頻繁に期待に沿わない再現で現像が出来上がってくることがあるような気がする。だから、僕も気持ちの上ではメインのフィルムながら消費量は少なくなり、巷の愛用者も少なく、ますます市販されるフィルムの銘柄が減ってきている。売れなければ製造されなくなるのは当然のことであるが、この世からなくしてしまうには、余りにも惜しいフィルムである。

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