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 No.238

三輪 薫(みわ かおる)


No.238 『写す』/京セラ・コンタックスサロン銀座 2004/9/10

「Rock」展が終わった。海外で撮影した作品だけを展示したものとしては初めての個展である。開催した京セラ・コンタックスサロン銀座は、フリーになってからの僕の作家活動を支え続けてくれたところで、今回で10回目となる。だが、残念ながら来年の3月でこの鳩居堂ビルから撤退することがほぼ決まったようだ。カメラ業界での京セラ・光学機器事業部の立場を考えると、地価日本一で有名な場所での高い店賃の負担の重さが理由では仕方がないとは思う。

しかし、京セラは営業利益をかなり出している会社であり、このサロンは文化を発信し、提供する場所である。利益至上主義を貫くことも分からないではないが、余りにも寂しい決断だと思っている。日本が世界に誇ることができる最大のものは、世界有数の素晴らしい自然と文化だと思っている。自然を破壊しないで維持するのは政府の務めがメインだが、文化に関しては今の政府の考え方だけではどうにもならず、写真界においてはカメラメーカーなどのバックアップを無視でない。

数あるメーカーギャラリーの中でも、落ち着いた雰囲気をもつ京セラ・コンタックスサロン銀座は、僕が最も気に入っている会場である。銀座の中央にあり、地下鉄駅からの地の利も抜群で、会場のゆったりとした気持ちのよい空間や壁面長も適度なもので、個展やグループ展を目指す人も多い。都内のメーカーギャラリーの中では唯一有料だが、それでも開催したい人が多く、魅力のある会場である。

ドイフォトギャラリーや写真弘社のギャラリー・アートグラフなど、京セラとは比較にならない小さな会社でも銀座界隈でギャラリーを維持している。この現実を考えると、鳩居堂ビルからの撤退を決めた決断は、寂しさを通り越したものと思ってしまう。京セラの心意気を見せ、東京での文化の発信基地である銀座に、是非永く居残って欲しいものだ。

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