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 No.251

三輪 薫(みわ かおる)


No.251 『写す』/デジタルカメラの宿命と可能性 2005/1/1

今や、カメラと言えばデジタル。疑問なのは話題になるのはデジタル写真やカメラなのに、実のところ作品創りに勤しんでいる人達の、一体どれくらいがデジタルカメラをメインにして撮っているのだろうか。新聞や雑誌などの仕事は完全にデジタル化に移行しているようだが、コンテスト/月例やカメラ誌の口絵に掲載の作品や個展作品は、まだまだ圧倒的に銀塩フィルムでの作品が多い。

EOS D30 の発売から 60D/10D と毎年のように買い続け、36万/26万/19万円と投入し続けてきた。しかし、デジタルカメラの進化は速く、D30/D60は1年くらいしか使っていない。3〜4年で、80万円を越える投資?なのに、このような高額のカメラでも実に短命なのだ。銀塩のメカニカルカメラなら、どの価格でも数十年は現役で使えると思う。デジタルカメラの魅力と可能性は否定しないが、余りにも悲しく寂しい現実には嘆かざるを得ない。EOS-1D Mark II の軽量型か、いつの間にかカタログ掲載の大半を買い込んでしまったレンズが使える CONTAX RTS DIGITAL の発売を期待し、それまで待つことにするかも知れない。昨年開催の「風色-II」展はEOS D30/60D/10Dで撮り、全紙と全倍サイズの伊勢和紙photo にプリントしたが、結果としては画素数などにそれ程の不足を感じなかった。この様な作風での作品創りには、10D でも今後も十分期待に応えてくれるだろう。

Digital 写真は経費も大変で、カメラ/CF/プリンタ/パソコン/ソフト/インク/用紙と切りがなく、のめり込むと時間も随分掛かかる。睡眠不足になること請け合いで、特に女性の方にはお肌に悪く、化粧品代も高く付くだろう。しかも消耗品以外は数年ごとに買い換えを余儀なくされる。フィルム代や現像代が必要ないからと、デジタルに移行すると大変なことになる。経費節減が目的で銀塩写真と同じことをDigitalで行うなら、高価で買えないとぼやくハッセルやライカなど、結果的には軽く買えてしまうだろう。高価だと思われ、言われているこれらのカメラの寿命は実に永く、経費節減を目指す方にはフィルムで慎重に撮ることをお薦めする。

僕が2台愛用の中古で購入したライツ製引伸機/フォコマートは30〜50年前の機種である。この引伸機は現在では製造も発売も望めないだろう。古さを感じない素晴らしい作りで、いまだに精度も高く現役で活躍してくれている。しかし、銀塩フィルムや印画紙が何時まで発売されるか分からなく、多く揃えたカメラや引伸機などが現役引退を迫られる日が来るかも知れないと、気がかりではあるが。

銀塩で出来ることを Digital に求めると経費と時間を随分費やすが、Digital でしかできない和紙や画材紙などへのプリントに期待するなら、これはもう Digital をお薦めするしかない。音楽や映画の世界は早くから Digital を取り入れているが、写真界に限らず、デザイン、イラストレーション、絵画などの世界でも同様になってきた。Digital によって表現の幅が広がることは大変嬉しいことで、このような時代に生きていることは、実にラッキーだと思っている。

一昨年の7月と11月に京都と六本木で開催したインクジェットプリンタで和紙に出力した「風香」展を、三度目の会場になるが3月17日〜29日まで有楽町駅前の東京交通会館7階に移転する「京セラ・コンタックスサロン東京」で開催予定である。この作品はCONTAX 645 で撮影したフィルムをドラムスキャンし、伊勢和紙photoや越前和紙にプリントしたもので、銀塩とデジタルの融合を計ったものだ。今回の展示は全て伊勢和紙photo に出力した作品で、デジタルならではの「カメラで日本画を描く世界」を是非観ていただきたい。

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