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 No.256

三輪 薫(みわ かおる)


No.256 『写す』/冬の撮影 2005/3/8

1月には、いろいろなことが重なって、中国・九寨溝撮影ツアーの時だけしか撮影できなかったが、先月は二週間以上も心ゆくまで撮影できた。降雪の多いところに生まれ育ったわりには寒いのは苦手だが、冬の自然風景は四季の中でもっとも削ぎ落とされたシンプルな姿を見せてくれるので好きだ。

特に樹々が霧氷や樹氷に覆われた姿や葉を落として枝先まで見せてくれる凛とした表情などに惹かれる。また、湖沼などの水面が凍っていると色も引き算され、このような微妙な色合いを現してくれる表情にこそフィット感を抱く。多分にカラーよりも黒白写真が好きだからだと思っている。

僕が写真学校で学んでいた頃には、カラーフィルムや現像代が高くて滅多に買えず、思う存分には撮ることが出来なく、撮影は黒白一辺倒だった。しかし、この時の黒白写真漬けのお陰で、グラデーションや黒白の中に見出す色合いの変化を見据える力が備わったのではないかと思っている。だからこそ、現在の三輪流色使いがあると確信している。

霧氷や樹氷などの作品は、どちらかと言えばくっきりと晴れ渡った青空の下で撮った作品が好まれるようだ。樹々の姿が映えて見えるからだろう。しかし、へそ曲がりの僕は、色が引き算される季節だからこそ、より一層に色が整理されるソフトなライティングを好んでしまう。

青空を背景にした樹々の姿は、眺めている分にはよいものだが、心の底から長々とカメラを向ける気にはならない。どうにも白と真っ青な色との対比を捉えた写真の色再現に心が惹かれないからである。ましてや鮮やかタイプのポジフィルムとPLフィルターとを組み合わせた描写などは、僕の美意識をはるかに越えた世界になってしまう。

幸いにして、先月の撮影の日々は大半が曇り日か降雪だった。不思議と朝夕が色に染まることがなく、この様な体験は初めてだった。だが、写真的には朝夕は晴れて淡く色付き、日中には曇ったり雪が舞ったりしてくれる日々が多いのが僕の理想かも知れない。

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