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 No.260

三輪 薫(みわ かおる)


No.260 『写す』/インクジェットプリンタとメディア 2005/4/30

先月、京セラ・コンタックスサロン東京で開催のデジタルプリント展「風香」の会期中に、東京ビッグサイトで開催された「Photo Imaging EXPO 2005」のキヤノンブースでセミナーを担当した。勿論、依頼された内容は、時代を反映したデジタルに関したことだった。僕が話せるのは、インクジェットプリンタと和紙を組み合わせたデジタルプリントによる作品創りについてで、開催中の「風香」展の内容と合うタイミングのよいものだった。

キヤノンの顔料タイプの大型インクジェットプリンタは、エプソンと違って2機種のみ発売されている。Canon imagePROGRAF W8200 / W6200 がグレードアップとなり、W8400 / W6400 と名称が変わった。今回の特徴は、機構の新しさだけではなく、対応用紙としてアート紙(画材用紙)と和紙が加わったことだと思う。キヤノンもやっと写真だけにとらわれない活用を考え始めたと感じている。

昨年にキヤノンサロンで開催したデジタルプリント展「風色-II」は、W6200で伊勢和紙に出力した。巡回展でW6200 も含めたキヤノンプリンタで「伊勢和紙プリントデモ」を開催し、名古屋では東急ハンズで、大阪ではカメラのナニワで行った。伊勢和紙の大豐和紙工業(株)社長の中北喜得さん自らが行い、大阪ではキヤノン販売(株)とキヤノン(株)の社員の方が東京と大阪から6人が集まってくれた。この時に話を聞きたいと言われ、2時間ほどお話ししたが、エプソンプリンタと同様とまでは行かなくとも、画材用紙や和紙への対応への重要性を語った。この件に関しては、現場の人達も関心を抱いていて、今回の対応へと繋がったと思っている。

デジタルカメラやインクジェットプリンタによる作品創りは、銀塩の延長で考えていては表現の可能性を自ら狭めてしまうだろう。まだまだ銀塩での表現の可能性は高いが、巷には「もはやデジタルが銀塩を越えてしまった」などと公言している勘違いもあるようだ。

今回の開催が3回目となった「風香」展の作品は、6×4.5cm判をドラムスキャナでデジタルデータ化したものだが、銀塩でプリントしたものに比較すると、なんと8×10インチ判に近い再現性を見せてくれる。和紙に全倍やその数倍のサイズに拡大した大型プリントを見ても、とても6×4.5cm判で撮ったとは思えないくらい凄い再現性である。フォト光沢紙や画材用紙に比べ、なんとなく甘い描写に感じる和紙に出力してもである。銀塩フィルムの情報量の多さと、ドラムスキャンの凄い威力を見せつけてくれた。現在の小型デジタルカメラでは、到底及ばない。

しかし、 Digital フォトへの可能性も高く、表現力として銀塩と肩を並べる前から自ら行うことによって、より深く Digital 世界を理解できると考えているのも事実である。だからこそデジタルカメラでの作品創りにも没頭し、個展も開催して確認している。

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