Toppageへ
 No.264

三輪 薫(みわ かおる)


No.264 『写す』/コンタックスの行く末-2 2005/6/14

先日、あるカメラ誌編集部からアンケートが来た。「名機と思われるカメラ」は何かと言うものだった。僕は筆頭にコンタックスRTS III を上げた。そのような回答をした人がいなかったためだろうか、直接話を聞きたいと連絡があり出かけた。カメラマン同行で、このカメラにふさわしい撮影スタイルを決めればよかったと、ちょっと、後悔。

コンタックスが多く売れなかった原因の一つに、コンタックスは高いと言われ、思われていたことがあるだろう。上記のカメラマンも言っていた。しかし、巷で思われているほど高価なカメラやレンズだろうか。ライカのように本当に高いカメラと違い、性能を考慮すると国産カメラと同等か、それよりも安価とさえ感じる価格設定だと今でも思っている。確かにRTSIIIは定価35万円、レンズには数十万円を超えるものも数多くあり、再生産の300mmF2.8は何と200万円。これらからは確かにコンタックスは高いと思わせる。

しかし、テッサー45mmF2.8 など初期のタイプの価格は2万円でありながら、全倍に引き伸ばしてもびくともしない描写力を見せるものもある。また、10万円を切った安価なタイプのレンズやボディーも多く発売されていた。これらのレンズでの描写力も国産レンズの20万円以上のレンズにも勝るとも劣らないと思っている。このタイプのレンズで撮影した作品を、短辺1メートルに引き伸ばした個展も何度も開催しているが、中判以上のカメラで撮ったと勘違いしたプロもいた。

このように実に優れた描写力を発揮するレンズを多くシステム化していても、何故に多く売れなかったのだろうか。全てのボディーやレンズのデザインも実に美しく、手に馴染む操作性でも他社のカメラやレンズを凌ぐものがある。645も同様である。しかし、フルサイズのCONTAX N DIGITALの開発を見込んでN1が発売された頃から、この辺りのよさが怪しくなってきたのも事実だろう。美しさがなくなり、レンズも扱いづらいほどに大きく重くなってきた。描写力優先と言えども、17-35mm などフィルター径が95mmで、中判カメラでもお目にかかれないビックリ仰天の大きさと重さでは敬遠されても不思議ではない。しかし、当然ながらこのレンズは実によく写り、信頼感も高く、僕は気に入っている。

また、それまでのRTS シリーズの愛用者達は、新マウントのN1の登場を歓迎した訳ではなく、ただでさえ数少ないユーザーの反感を招いてしまったように聞いている。デジタル一眼レフカメラもニコンのように従来のレンズを装着できるタイプから開発と発売を始めれば、逆に歓迎されたはずで、僕もとても残念に思う。素晴らしいレンズ群がデジタル時代になっても活用できるからである。EOS Digital の愛用者には、アダプターを介してCONTAX RTS シリーズのレンズを装着し、その描写力を生かした作品創りを楽しんでいる人も多いと聞く。

今日は伊勢和紙ギャラリーで開催中の多銘柄の伊勢和紙を活用したデジタルプリント展の最終日だった。ご来場の皆さん、お手伝いくださった皆さん、ありがとうございます。展示は、CONTAX 645 で撮影のフィルムをデジタルデータ化したものと、EOSDigital で撮影の作品だった。銀塩からデジタルへと移りゆく時代を反映したような個展となり、複雑な思いである。

戻る