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 No.268

三輪 薫(みわ かおる)


No.268 『写す』/デジタルフォトのオリジナルとは-2 2005/7/12

リバーサルフィルムでは、シャッターを切った瞬間に銘柄による色合いや露出値による濃度の全てが決まってしまう。しかし、入稿するポジフィルムは現像をしたままで、ネガフィルムで撮った場合のようにプリントで各部を調整し、表現レベルを上げた作品で入稿できるのとは大きな違いがある。デジタルフォトはネガフィルムと同じで、パソコン上で画像調整を経て入稿するので、作品としてはポジよりも満足感の高いレベルに仕上げることが出来、印刷結果もよいことが多い気がする。

現在の印刷は、リバーサルフィルムでもデジタルデータ化して製版しているので、以前のように校正刷りを出さないこともあると聞く。時代は確かに変わってきている。

リバーサルフィルムは、ネガフィルムに比べハイコントラストな再現になる。肉眼ではフレーミングした画面全体のグラデーションがきれいに見えても、リバーサルフィルムで同じような印象に写るとは限らない。だから、印刷へのリバーサルフィルムでの入稿は、そのフィルム自体にハイライトの飛びやシャドウ部の潰れが多いものは選択できない。しかし、ネガ同様のデジタルでは、ポジならハイライトからシャドウ部のトーン再現に疑問や限界を感じて諦めたカットでも、調整して印刷可能な作品に仕上げることができる。その点では、元原稿として考えるならデジタルのほうが優れていることになる。

銀塩フィルムの場合、自分にとっての自信作はプリントにして微調整を加えて完成度を上げ、個展作品として発表している。だから、フィルムそのものを完成度の高いオリジナル作品とは思っていなく、元原稿と考えている。カレンダーやポスターと違って、印刷に経費を多く掛けられない雑誌などでは、入稿する作品も限界があり、その点を考えてセレクトしているのが現状である。

写真展の会場に展示した作品と誌面に掲載された作品とが微妙に違っているのは、印画紙と印刷との違いだけではなく、同じフレーミングの作品でも、元々のフィルムのセレクトやプリント時の調整が違う場合があるからだ。

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