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 No.275

三輪 薫(みわ かおる)


No.275 『車』/VW T-4 ウェストファリア ユーロバン CV 2005/9/7

今回購入した車は、何と13年落ちの年代物の中古だが、朽ちたところやイスのへたりもなく、長距離運転でも不思議なくらい疲れを感じない。実にがっちりしていて頼もしくさえ思わせるから不思議である。キャンピングカーというとかなり大きなサイズを想像しがちだが、このフォルクスワーゲンT-4をベースにしたキャンピングカーは、デリカスペースギアの車幅を少し広くした程度だ。最低地上高はデリカ4WD並みだが、床の高さはかなり低く乗り降りがしやすい。やはり、道具としての基本的な造りや考え方の違いには、馬車と駕籠の歴史的な背景を感じてしまう。

このような小型車をベースにしたキャンピングカーながら、よく考えられた車内レイアウトと装備で、乗車定員を4-5人に押さえ、実用的に優れた造りになっている。二口コンロと小さなシンクがあり、40L余りのコンプレッサー式冷蔵庫は見せかけの冷温蔵庫とは雲泥の差がある。FFヒーターは付いていなく追加装備にしたが、外気が-10℃くらいでも車内では汗をかくほど暖かくなるとかで、冬期のキャンピングも快適だそうだ。このFFヒーターはガソリンを燃料とし、エンジン停止の状態で数日は稼働するという。冷蔵庫やFFヒーター用のサブバッテリーも100Aを越えるものが2個装備され、数日の使用なら充電しなくてもOKだと聞いている。上がっても、AC電源を取り入れるコードに接続すれば充電もするらしい。最近のキャンプ場にはAC電源もキャンプサイトに用意され、車のAC コンセントに接続すれば家庭用の電化製品も使用可能だ。まことに便利に出来ている。

また、乗車定員を少なくした分、収納スペースもかなり多く、ベッドスペースもフルフラットになる後席のイスと、ポップアップ式の屋根部分にある。しかし、フルフラットになるイスのため、実用的には後席に乗っての長距離ドライブはきつそうだ。この車は2人用と割り切った方が賢明だろう。もう一つ追加装備をした2,5m幅のサイドオーニングは大きな屋根になり、炎天下や雨でも外で快適に4人が食事できる。大雨でもこの下で撮影ができ、食事などの用途以外でも役立ちそうだ。

今回この車に乗り換えた理由には、デリカに乗り続けることが出来ないことの他に、自然風景を撮り始めた頃の自分を、もう一度思い起こしたかったからである。当時は大半車で寝ていて、鳥のさえずりや、川のせせらぎや風の音を楽しみながら生活していた。自然の空気を一杯吸い込み、自然を眺め、体や心で受けた感動をカメラで捉えていた。自然を満喫していたような気がする。

これまで乗っていたデリカスペースギアは、1ボックスカーとは言え後部のイスがセパレートでフルフラットにはならない。歳を取ったせいもあるが、この車に乗り換えてからは、車内泊はきつくて全て宿で泊まっていた。また、初代デリカ4WD車は撮影用に改造して車内で寝ていたが、スペースギアに乗り換えた頃には自由な時間が少なくなり、現地では当時ほどにはのんびりと過ごせなくなっていた。撮影後にはそそくさと次の被写体を求めて移動している。このような撮影スタイルでは、どれだけ自然が与えてくれるものを受け止めているのか、疑問を感じ始めていた。個人的な撮影では時間に束縛されることなく、もっと自由に自然を満喫し、以前のようにのんびりと過ごしたいと思うようになってきた。

今回のVW T-4キャンピングカーは13年落ちの中古車であるが、初代デリカ4WD/4ナンバーのベース車をショップで改造し、後、より使いやすいように自作で改造して乗っていた車とは比べようがないくらい快適だ。自然風景を撮り始めた頃は、撮影時間よりも自然を楽しんでいるほうが、はるかに長かったような気がする。自然の中で珈琲をたてて飲んだり、夜には星を撮る傍ら、キャンプ用のイスを出して冷えたビールを飲んでいたりと、いま思い出しても懐かしく、楽しいひとときだった。VW T-4で、再度体験できるのは嬉しい。

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