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 No.277

三輪 薫(みわ かおる)


No.277 『写す』/グラデーションが豊かな写真 2005/9/23

23日から29日まで数寄屋橋の富士フォトサロン・スペース2で僕が監修した勝山由子写真展「旬彩模様」〜樹々への想い〜が開催される。勝山さんとはカルチャースクールの写真講座で出会ってから16年余りのお付き合いがあり、現在は主宰するフォトワークショップ「風」のメンバーでもある。

今回はタイトルのように木々を撮った作品で、作者もフィット感を抱く晴天よりも曇天や霧などの気象条件で撮ったものをメインにセレクトして会場構成した。四季折々の作品を展示しながらも全体に色が引き算されたおとなしい色調の作品群である。このような気象とライティングでは、被写体の隅々までも光が回り、コントラストの低い撮影条件になる。つまり、見たままに近いグラデーションでプリント再現ができる。しかし、撮影はリバーサルフイルムなので、見た時よりも多少はコントラストが高く、色合いも鮮やかになることが多い。

写真は絵画などに比べ格段にグラデーション再現が豊かである。しかし、写真愛好家の常用フイルムも随分以前からネガフィルムよりもコントラストが高く鮮やかに再現されるリバーサルフィルムが多くなり、このフイルムからプリントを行う銀塩プリントの主流になったダイレクトプリントは、よりコントラストが高くなる。リバーサルフィルムも色合いが鮮やかなタイプがもてはやされ、風景写真ではPLフィルターが常用され、色合いも見たままよりも随分と強調した再現の写真が溢れている。

このような現状の中で、リバーサルフィルムからインターネガを作ってネガフィルム用のカラーペーパーにプリントした勝山さんの作品は、撮影条件と共に、会場にしっとりとした風情感を漂わせている。勿論、ストレートに焼いた作品は皆無で、作品内容と表現によって各部の調子を調整し、可能な限り見たままの自然さを保つように仕上げているのは言うまでもない。今回は僕の個展作品の全てをお願いしている日本を代表するラボマンの方にプリント制作をお願いした。

僕が監修する写真展は多い年には10を軽く越えるが、余程のことがない限り自分の個展も含め、上記の方法でプリントしている。写真の特徴であるグラデーションの豊かさを損ねることなくプリントで再現したいからであり、ことさら現実よりも強調する必要はないと考えているからである。眼で見て感動した風景を強調しなければ見る側に感動を与えられないとすれば、作画によっては時には嘘っぽい表現になることがあるからだ。

これらは、好みや趣味の問題でもあり、どのような再現や表現をしようと自由である。ただし、強調した作画と表現の写真の大半は、束の間の感動や驚きは得られても、絵画のように長く心に響く想いを留め、持続させるには、長年の経験で難しいのではないかと考えている。

今回の作品内容に関しては、ここでいくら言葉を連ねても語り尽くせない。日本フォトコンテスト誌10月号の口絵に4点掲載していただいたが、これで全てが分かるわけでもない。是非、会場に足を運んで戴いて生の作品をじっくりとご覧いただき、心で感じて受け止めていただきたい。

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