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 No.280

三輪 薫(みわ かおる)


No.280 『写す』/デジタルカメラの行く末 2005/10/30

デジタルカメラの進化も著しく、毎年のように新機種が各社から発売されている。写真もアナログ人間を自負する僕だが、期待と仕方なしにと言った心境で買い続けてきた。と言うよりも、カメラも含めたデジタルで作品創りを行うには、買い続けなければならない状況をメーカーは用意している。僕のデジタルカメラはキヤノンの EOS Digital で、EOS D30/ D60/10D/kiss Dと愛用している。今回発売になったEOS 5Dは30万円を軽く超える価格だが、大変な人気で入荷待ちのショップが大半のようだ。つかの間しか使えない高額なカメラが、このような人気と期待感を抱かせるのが不思議であり、デジタルカメラはもはやキヤノンの独壇場であるかのような勢いである。

4年前に購入のEOS D30 は36万円ほどしたと思うのだが、現在の巷での中古価格など一体いくらくらいだろうか。多分、バブルが弾けた時の倒産寸前の会社の株価のように値段の付けようがないくらいに下がっているか、ただでもいらないと思われるくらいのものになっているかも知れない。僕が写真の世界に入った35年前頃の物価相場では7-8万円に相当する価格である。この価格ならニコンFやキヤノンF1辺りが楽に買えたのではないだろうか。これらのカメラは少なくとも数十年は使い続けたいと思って買い、使うに従って益々味わいや愛着も深くなる。しかし、現在発売されるデジタルカメラは、高額でももはや消耗品で、長く愛着を覚えることが出来ないから悲しい。

だからこそ、売れている製造メーカーは笑いが止まらないだろう。デジタルフォトを期待する者には嬉しい時代だが、否応なしに短命なカメラや周辺機器を買い続けなければならない辛さも併せ持つ。複雑な気分である。しかし、アナログでは叶わなかった表現がデジタルによって可能になったのは確かで、作品創りに赴く者にとっては、痛し痒しである。

僕は下取りに出したことはないが、このようにあっと言う間に価値がなくなってしまうデジタルカメラの多くは何処に行ってしまうのだろうか。新機種はスペックが格段に充実して安価になる。数年前に発売のカメラなどは格段に値落ちしてしまう。趣味で写真を撮っている人には高額のカメラを買えないと嘆く向きもあるが、時代が数年遅れでやって来たと思い、新品同様でも超格安の中古を買うのも一つの選択であるかも知れない。長い人生、数年の違いなんて大したことはないからである。

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