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 No.283

三輪 薫(みわ かおる)


No.283 『生きる』/適正価格 2005/12/17

最近、不法な設計と施工をされたマンションのことが毎日のように新聞やテレビで報道されている。我が家の変則的な食事時間に国会での生中継を見る機会があった。被害者には気の毒なことだが、同じような造りの建物にかなりの割安感のあるものがあるはずはない。ビデオに録画しておいたアメリカの刑事ドラマの再放送でも、外観は素晴らしいが家中シロアリに蝕まれた物件を掴まされた場面が放映されていた。

我が家は一軒家で、バブルの頃に予算の関係で地元の業者に依頼して改築したのだが、完成後数年でドアの開け閉めが不調になった。小屋裏風の三階建てであるが、法律的には今話題の構造計算が必要とかで、その費用も結構なものだったような気がする。それでも構造的に何となく心配で、自ら図面に定規を当て、部材を増やす指示をした。しかし、階下ほど広くなる室内レイアウトのためか重心が高く歪みが起きてきたようだ。小さな木造ですらこの有り様である。

この改築時には住宅展示場をかなり巡ったのだが、どこの大手も依頼した建築業者よりも坪単価で10〜20万円も高かった。高いには理由がある。大手は営業マンも多くいて、広告に投入する金額も建築費に加算される。これらが余り必要ない業者なら、その分安価になるだろうと判断した。前の建て売りが、見かけよりも余りにもお粗末で、築10数年で通し柱が腐ってしまった。水回りと外壁のいい加減な造りによって、高野豆腐のようにフカフカになってしまったようだ。

この教訓を生かすため、図面を見て心配な部分を補い、手抜きがないよう毎日のように現場に立ち会っていた。業者によると、同じ坪数の他の家よりも数割は部材を多く使った家だと言っていた。しかし、結果的には、それでも不都合が起きている。高層建築のマンションでは、現場を見ても素人では判断できないだろう。

今回の被害者の気持ちは分かる。僕にしたって、同じ建坪でより安価に建ててくれる業者をやっとの思いで捜し出したが前述のような問題が起きている。しかし、今回の物件の価格を見ると、バブル時代よりもかなり安価になったとは言え、異常とも思える価格に感じてしまう。他の物件も検討したはずで、価格を下げるにも限界があり、何ものにも適正な価格がある。それを大きく逸脱したものに疑問を感じなかったのだろうか。

我が家を建てた業者は倒産したらしく、苦情の持って行きようもない。撮影に出ているときなどに地震があると、普通よりも多くの部材を使っている家であっても、つい心配してしまうのだ。

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