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 No.286

三輪 薫(みわ かおる)


No.286 『生きる』/のんびり過ごしたい人生 2006/1/1

僕は元来のんびり屋である。まあ、愚図と言ってもよいかも知れない。撮影スタイルにも現れ、バタバタと動き回るのは苦手であり、一箇所で納得できるまでじっくりと構えているのが好きである。

撮影は直感で行い、写真教室やカメラ誌などで解説しているようなことはあまり考えていない。結果として理屈がついてくるだけである。出会いを感じて撮るには、理論や理屈では作品に反映されず、見る側に自分の心情を伝えることは難しいと思っている。写真は真実を写さないが、心は写してくれると思っている。写真を「心模様の写し絵」と言っているのはこのためだ。

時間の使い方が下手な僕は、抱える仕事や所用への取り組み方が効率的ではなく、自由な時間を多く持てずにいる。だからか、時間がたっぷりあった自然風景を撮り始めた頃の自分に戻りたいと思うようになっていた。撮影用の三菱デリカが排ガス規制で今年1月末を限りに乗れなくなるのを機に、長年憧れてきた VW T-4 キャンパーの中古車を昨年5月に見つけ、思い切って7月に入手した。結果的には月に一回乗って出掛けることができればよいほうだったが、今年こそ、この車と共にのんびりと過ごしたいものだと思っている。

今年は名古屋のデザイン学校の写真科に入学してから35年目を迎えている。フリーになって20数年、振り返れば長いようで短い年月だった。独立した頃、おぼろげながらも20年計画を立てた。のんびり屋の性分で生きていると、何となく過ぎ去ってしまうのではないかと思ったからである。この計画も、回りの多くの方達のお陰もあり、大半と言ってよいくらいに実現できた。階段を一歩一歩ユックリと上るように、着実に歩んできたのがよかったのかも知れない。当時は多少背伸びをした人生計画だったが、計画を少しずつクリアーしていると、初期の計画内容も当時考えたほど難しいことではなくなるものだ。予想外だったのは和紙プリントが実現できたことだ。長年、結果を予測して作風などを研究してきたことが本当に良かったと思っている。

人生、何とかなるものである。高齢に近づくと何となく焦りも出てくるだろうが、楽天家の一面も持ち合わせた身には、遠くの目標を見据えながら、目の前の計画を着実にこなしてゆくことを考え、実行していれば、道は開けてくるだろうと思っている。

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