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 No.291

三輪 薫(みわ かおる)


No.291 『生きる』/もったいない 2006/2/24

日本人の生活の美意識に「もったいない」と言う心根がある。世界共通語として認知されるのも時間の問題とも言われている。嬉しいことだ。僕の母親は、頂き物の包装紙や紐なども丁寧にほどいて保管していた。このような姿を見て育った僕は、同じことを繰り返し、押入や収納棚にはまるでゴミの山ほどに様々なものが溜まり、はみ出たものが部屋中に散らかってくる。

上京して6畳一間の木賃アパートから始まった生活空間も、現在ではかなり広くなっているが、実質の生活スペースがどれだけ広くなったのかは疑問である。床面積が広くなるに付け、ものが増えてくる。貧乏性の僕にはものを捨てられず、溜まる一方である。10数年前に改築したが、以前の家は収納スペースを近隣の家よりも多分倍くらい造っていた。それでも足らず、屋根裏に趣味の大工仕事で10数畳のスペースを造った。しかし、改築時にはここも満杯になっていた。その反省で今の家は逆に少なくしたのだが、捨てきれない性分が災いし、見える床のスペースが少なくなる一方である。

カメラ機材やアウトドア用品なども大好きで、次々と新たなものを欲しくなり、買い込んでも手放せない性分で、我ながら呆れてしまう。VW T-4を入れるため、ゴミ置き場同然だった車庫にあったものを粗大ゴミ処分場に運んだのだが、実に数百キロもあった。作品ですら個展で展示したものは手元に置いておきたいと思うので、個展開催が多いため、かさばる額装作品も多くなる一方である。

何事にも「もったいない」と言う意識は十分にあるのだが、思う気持ちがずれていることも確かなようだ。余分なものを買うほうが勿体ないことだろう。シンプルに生きたいと思うのだが果たせない。たかが、人生80年から長くても100年。地球規模からすると大した時間ではなく、宇宙からすると無いに等しい時間に生きているのに、物欲だけは衰えを知らないようで困っている。

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