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 No.299

三輪 薫(みわ かおる)


No.299 『生きる』/写真家の生き方 2006/6/10

バブルが弾けた頃「いよいよ三輪さんの時代だね」と言ってくれる人が何人もいた。既にその頃の僕の作品が、癒し系と呼ばれている作風であったからだと思う。しかし、それからもう随分長くなるが、僕には一向に風が吹いてこない気がする。

バブルの真っ最中には、僕の地味系のおとなしい作品も数多く企業広告やカレンダーなどに使われ、結構な掲載料が入ってきた。企業にも余裕があって、遊び心も許されたからだろうと思っている。その他にもコマーシャルフォトなどの仕事もしていて、子供達も小さかったので贅沢な暮らしを望まなければ生活は楽だった。しかし、収入の大半を作品創りのため、撮影や機材購入や個展開催などに使ってしまうので、貯蓄に廻す余裕はなかった。

現在、多くの企業はバブル時ほどの遊び心など持ち合わせる余裕がないようだ。営業力がなく売れない作品創りが得意な僕は、「鳴くまで待とう」とのポリシーを強くもち、高望みしない生き方を選んでいる。いや、営業不得手な写真家は、高望みしてはいけないと言い聞かせているのが本音かも知れない。それでも今まで何とか生きてきたし、子供達も無事大きくなり、二人とも親の学歴を越えて大学を出て社会人になっている。僕も撮影や個展開催に悔いのない作家活動を続けているし、これほどの幸せはないだろうと思っている。人間の欲望にはきりがないが、程々で納得し、自分のスタイルを貫くのも悪くはない。

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