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 No.301

三輪 薫(みわ かおる)


No.301 『自然』/世界遺産への登録の功罪 2006/6/28

先日、数年振りに北海道の知床半島に行き、知床五湖も訪れた。平日だったが駐車場には10数台のバスと乗用車などで満車状態だった。バスからは添乗員に案内された人達がぞろぞろと下り、一列縦隊で五湖を歩く。およそこのような場所を歩く格好ではなく、都会の観光地などを闊歩するかのような服装の人達も結構見受けられた。

北海道で大好きな湖にオンネトー湖がある。初めて訪れたのは40年近く前である。この頃は日がな一日いても観光客らしき人には全く会わず、道内の人でさえこの湖を知らない人も多かったようだ。ところが、いつの頃からかパック旅行の観光バスが早朝から夕方まで押し寄せるようになってしまった。

知床五湖にバスで訪れる人達は添乗員の後を追うように歩くだけ。オンネトー湖も多くの人達は記念写真を撮る程度の時間を過ごすだけで、のんびりと自然を楽しむ時間的な余裕はない。慌ただしく過ごし、次への観光地へと移動しているようだ。

日本は素晴らしい自然や文化の宝庫であり、世界遺産への登録を期待する地域も多いだろう。しかし、登録された途端に今まで関心がなかった人達までどっと押し寄せる。素晴らしい自然を観ることは悪いことではないが、押し寄せるバスがまき散らすジーゼルエンジンからの排ガスの量は並ではなくなってくる。結果、自然を守るどころか破壊に手を貸すことになる。何のための世界遺産登録なのか、よく分からない。25年前頃に初めて訪れた屋久島も、当時は宿泊施設すら少なく、レンタカーなど全くなかった。今やホテルなども林立し、レンタカーが走り回り、多くの観光客が押し寄せている。

上高地も一般車は乗り入れできないが、黒煙をまき散らす観光バスは入ることができる。実におかしな規制である。知床半島が世界遺産に登録された後は、知床大橋への道路は閉鎖され、一般車の乗り入れが出来なくなってしまった。しかし、この知床大橋には知床半島に行く度に必ず寄っているが、五湖のような多くの車に出合ったことがない。オンネトー湖も、数年先にはバスは勿論のこと自家用車の乗り入れ規制が始まるとの話も聞いた。

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