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 No.307

三輪 薫(みわ かおる)


No.307 『写す』/フィルムカメラの開発中止 2006/8/30

先日EOS kiss Digital Xが発表になり、EOS学園講師対象にも説明会があった。EOS kiss Digital Nを遙かに凌ぐスペック搭載の機種である。EOS Digitalにもやっとだが、何故か最も安価なタイプに埃を総合的に除去する「クリーニングシステム」が内蔵された。それでも残っているホコリは、パソコンで簡単に除去できるソフトもある。1,020万画素で、液晶画面も2.5インチと見やすく、巷での入手価格は8万円くらいだ。愛好家にも、もう十分と思えるデジタルカメラの登場である。

先日、撮影で留守にしていたときの新聞を整理していて、フィルムカメラの製造が世界のトップであるキヤノンが開発を止めるとの記事を見つけた。別に驚くことではなく、世の中デジタルカメラ全盛なのだから、営利企業の考え方としては当然だろう。また、もはやフィルムカメラには開発すべき新たな機構が必要とも考えられないくらい進化してしまった。EOS-1vなどを作り続けてくれるだけで十分である。

デジタルカメラは日々進化を続け、毎年のように新製品が次々と発売になる。買い続けるのは大変だが、デジタルフォトにも表現の可能性を感じて撮っている者には、仕方がないと諦めるしかない。しかし、デジタルカメラは撮って直ぐにカメラの液晶画面などから撮影結果を確認できるため、失敗のない作品が残る。フィルムでの撮影では失敗もあり、ときにはこの失敗したカットから発見したり学ぶことも多かった。僕の現在の作風を見出したのも大半失敗作からである。デジタルフォトには、このような可能性は少なく、効率的な要素だけが残ってしまうような気がする。

近代的な庶民の家には、合理化されたレイアウトによって、無駄のない空間設計がされている。しかし、生活する上では、一見無駄と思える空間の縁側や土間などが心豊かなよりどころを与えてくれる。デジタルカメラは合理的な要素を多く持っているが、だからといってフィルムカメラが劣っているわけでもなく、デジタルカメラで十分と考えるのも早計な話である。共に愛用して撮りながら比較していると、このような思いを抱いてしまう。

しかし、フィルムカメラが存在し続けたとしても、肝心のフィルムがなくなってしまっては話にならない。嬉しいことに、コダックも富士写真フイルムもフィルムの製造から撤退はせず、富士写真フイルムは「今後も需要減になっていても感光写真事業を継続していきたい」と語っていると書いてあった。

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