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 No.309

三輪 薫(みわ かおる)


No.309 『写す』/銀塩のバライタ印画紙 2006/9/20

感材で困るのがモノクロの印画紙である。銀塩のモノクロプリントを行 わなければならない仕事やプロや愛好家の需要が格段に減ってしまったからだろうが、コダックや三菱製紙も製造を止めてしまい、大手で作っ ているのは富士写真フイルムやイルフォードくらいだろうか。寂しい限りである。

9月11日〜16日まで京セラ・コンタックスサロン東京で開催した「ファインプリント展-IV」で使用した銀塩バライタ印画紙「エクタルア」は、すでに製造を打ちきられたコダックのものである。専用の400Lの冷凍冷蔵庫を購入して大量に保存してきたものを使用した。印画紙も生もので、いつまでも保存できるわけではなく、良質なプリントを再現できる内に、この印画紙での個展を相次いで開催したいと思っている。

しかし、世の中捨てたものではなく、小さなメーカーだろうが、海外でバライタ印画紙を作っているところも結構あるらしく、ショップが輸入している。以後のファインプリント展では、きっとこれらのショップのお世話になるだろう。カメラも同じように、大手メーカーだけが作ることができるというわけではなく、デジタル全盛といわれる今、フィルム用カメラの注文が多くなっている処もあると新聞に掲載されていた。手作りの木製大型カメラであるが、家内工業的な規模だからこそ可能なのだろう。撮影の利便性にはデジタルは最適だが、撮って楽しく、心が充 実する撮影には、寿命の短いデジタルカメラは木製の大型カメラには敵わないと思う。不便だからこその魅力もあるものである。

今回の個展では初めて銀塩プリントと伊勢和紙によるデジタルプリントとのコラボレーションで展示した。銀塩とデジタルの表現は別ものであると思っているが、似たような印象に仕上げたものが会場でどのように見え、感じるかを確かめたかった。評判はよかったように感じている。しかし、同じ作風のちょっと離れたところから見ると同化したように感じる仕上げのプリントとはいえ、同じ会場に展示するのは予想していたよりも難しいことだと思った。11月には伊勢和紙ギャラリーでも開催するが、再度確かめてみたいと楽しみにしている。何事も初めての体験から始まり、回を重ねるに従ってこの経験がプラスされて、求める方向に近づくのだろうと思っている。

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