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 No.310

三輪 薫(みわ かおる)


No.310 『写す』/デジタルは嘘を言い、銀塩は正直なのか? 2006/9/30

先の新聞記事で、デジタルカメラを使ったことも、人に借りてシャッターを切ったこともない人のコメントとして、デジタルカメラを批判的にみている人がいて驚いた。他人の作品を見たり人の話を聞いただけで判断出来るわけではなく、僕なら自分で試しその結果を積み重ねてから判断する。

しかも、フジクロームベルビアのような世界最高の鮮やかさとコントラストを誇るリバーサルフィルムを常用していると思う人で、その人のコメントに「デジタル写真は撮影後に夕焼けの色を濃くするような創作もできてしまう」と批判していた。ベルビアこそ、目で見た色合いやコントラストを夢の世界のように再現してしまう世界有数のフィルムである。

ベルビア(RVP)が発売になった頃、海辺でオレンジ色に染まった夕景の空をベルビアとエクタクローム64プロ(EPR)で撮り比べたことがある。RVPはビックリするほど美しい、淡い青から淡いピンク、そしてオレンジへと多様な色合いの夕景に再現されていた。EPRは、ほぼ見たままのオレンジ色に仕上がっていた。RVPは実際の光の色を再現し、EPRは人の視覚に合わせた再現をしていると判断した。この発色特性は現在もほとんど変わってはいないと思っている。

だからといってベルビアが粗悪なフィルムであると判断しているわけではない。僕も結構愛用している。しかし、見えていない世界を引き出したり、誇張する描写ではなく、フジクローム特有の透明感のある再現性や、他の銘柄のフィルムでは期待する色やコントラストが再現できないと判断したときに選んで使っている。自然風景には自然観を大切にしたいので、PLフィルター同様に常用はしていない。

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