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 No.311

三輪 薫(みわ かおる)


No.311 『写す』/手作りカメラ 2006/10/10

写真は、所詮ボディー・レンズ・シャッター・絞り・フィルムがあれば写すことが出来る世界だ。昔のカメラは全てがこの思想で作られていた。進化したフィルムカメラは露出やピント合わせ・フィルムの装填などが簡単に行えるようにしただけで、機構的には進化しても、基本は変わっていない。デジタルカメラはネガフィルム内蔵のカメラともいえるだろう。

カメラは写真を撮る道具であり、簡単に失敗なく早く撮ることができる便利なデジタルカメラが全盛になったのは理解できる。しかし、撮影時の手間が掛かるフィルムを使用する大型カメラの愛用者が、なぜか少しずつだが増えてきたようだ。世の中、利便性だけでは進まなく、撮る楽しみや心の満足感に惹かれる人もいるということだろう。

急いで撮る必要がない場合、じっくりと対象に向かってカメラを構え、心を込めてシャッターを切る喜びもある。これは、いくらデジタルカメラが進化しても、この気持ちは味わえないだろう。銀塩の大型カメラならではの世界だからである。その大型カメラだが、やっぱり心を満たしてくれるのは手作りの木製だ。

木肌が感じさせる暖かな風合いや手触りが、何とも言えない心の充実感を生む。写す道具としては最高のものだと思っている。30年前頃に最初に入手したのが「長谷川製作所」の8×10インチ判の暗箱と木製ホルダーだった。特にこの木製ホルダーは、今見てもほれぼれするほどのものである。5枚注文したら、一ヶ月分の給料が飛んでしまった。余裕があればもっと買いたかった。次に入手できたのが、中古だがアメリカ製の木製4×5インチ判ビューカメラのB&J。木製部分がグレー塗装で、赤蛇腹が特徴だ。そして、木製カメラの世界最高峰の作りである日本製のエボニー。現在、8×10インチ判1台、4×5インチ判を2台所有している。合間に求めたのが駒村商会の4×5インチ判のウッドマン。これは安価な割にはよくできていて、実に可愛らしいのが気に入って、試写して直ぐにローデンシュトックのシロナー150mmレンズと共に発注してしまった。

現在では、大判カメラ用のレンズも中古市場では随分値下がりし、デジタル一眼カメラの中級機種1台分の20万円くらいで、木製暗箱のボディーとレンズ3本くらい入手できてしまう。一生愛着を抱きながら撮影にいそしめる、これらをセットで買うのもよいかも知れない。

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