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 No.313

三輪 薫(みわ かおる)


No.313 『写す』/フィルムのプリントサイズ 2006/10/30

写真も絵画や版画などと同様、オリジナルプリントを見ているほうが楽しい。写真は拡大して見せる世界であり、表現目的によってそのサイズも決まってくる。カラー作品に限ってだが、1991年に開催の「風光-II」以来、展示プリントのサイズも大きくなるばかりである。「大きいことはいいことだ」とは言えないかも知れないが、臨場感溢れた被写体を撮った作品は、やはりある程度のサイズにしないと写し手側の気持ちが伝わらないと思っている。京セラ・コンタックスサロンで4年ごとに開催してきた「風光-III〜IV」「樹奏」「Rock」は全倍が10点、900×1350〜1000×1350mmが5点、1200×1650mmを1点と決めて展示してきた。

全倍や畳一枚分くらいのサイズに慣れてしまうと、半切や全紙くらいでは何となく物足りなくなってくるから不思議である。また、広い会場では、大きな作品ほど映えて見える。和紙に出力した初めてのデジタルプリントによる個展「風香」も、短辺1mの作品や全倍サイズが大半だった。

一方で、自分でプリントしている銀塩のファインプリント展は、納得の行くまでプリントを重ねるため、プリントしやすい11×14インチの印画紙を基本のサイズにしている。コダックが言っているファインプリントの拡大率は、原版のフィルムの5倍前後とかで、35mmなら長辺180mm、645なら長辺280mmになる。8×10インチ判では1200mmである。

一般的には大型プリントには拡大率的に有利な大判カメラを、小さなプリントには小型カメラという考え方が多いようだ。しかし、コダックの考え方では中判カメラでさえ全紙では大きすぎる。だったら、思い切って拡大率を大きくすることによってフィルムの粒子の中に隠れたトーンを出すのも面白い表現になるのではないかとの思いがあり、カラープリントでの個展が大型プリントによるものが増えてきた。小さなプリントで再現されていないトーンを近くで眺めるのと、粒子の中に隠れたトーンまでを引き出した大型プリントを離れて眺めるのとは雲泥の差があると考えたからだ。フィルムサイズが大きくなるほど拡大率を少なめにするのもプリント方法の一つと考えている。

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