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 No.330

三輪 薫(みわ かおる)


No.330 『写す』/「花逍遙-II」の和紙プリント 2007/4/30

先日終了したキヤノンギャラリー銀座でのデジタルプリント展「花逍遙-II」は、大半が和紙で出力したものだ。デジタルプリントによる個展も今回で6回目だが、メディアはほぼ100%伊勢和紙である。インクジェットプリンタ用に開発された伊勢和紙Photoは他社の和紙に多いまるで画材紙に見えるような表面のにじみ止めもほとんどされていなく、和紙らしさを保った風合いが好きだからだ。

2003年に開催した初めてのデジタルプリント展「風香」では、伊勢和紙Photoの他に、モノクロにはかなり多くの手漉き伊勢和紙を、1,000×1,350mmの大型プリントには手漉きの越前和紙を、2004年に岐阜県美濃市町家画廊(美濃市制50周年記念展)で開催の「ピエゾグラフ写真展」では、美濃市の若手手漉き和紙作家4人が漉いてくれた美濃和紙で出力した。手漉き和紙には独特の味わいがある。

今回の花作品はカラーだが、花に色香を感じ、花の姿に女性を想い重ねて撮り続けた作品のため、日本画風に仕上げている自然風景と違って水彩画風の仕上げにしている。今回使用の伊勢和紙は機械漉きの伊勢和紙Photo 雪色と、この薄いタイプのプリンタ和紙 雪色をメインに使い、11点を3銘柄の手漉き伊勢和紙にした。花の絵柄や色、表情や雰囲気によって使い分け、会場にほのかな色香を漂わせた。2点だけドイツのハーネミューレの画材用紙を使い、インクジェットプリンタも目的によって4機種使い分けている。

このようにデジタルプリントでは、多様なメディアを選択し、使い分けることが出来、表現の多様性を生んでくれる。今回の最大の特徴は、和紙に顔料インクでプリントしたものに淡く手漉き和紙を重ねた作品を6点展示したことだろう。先の美濃市町家画廊展で1点作った作品は、昨年のフォトキナの会場に展示された。このような技法による作品は観たことがなく、東京では今回初公開だと思っている。淡い“White Veil”をまとった花たちが放つ色香を来場の方々に楽しんでいただけたと思っている。しかし、この重ね漉き、1点1点細かな指示・要望を出しているため、漉いてくれた大豐和紙工業(株)の中島さんには苦労と苦悩をプレゼントしてしまったようだ。しかし、見事に僕の期待に応えてくれた。この僕の要望を叶えてくれた大豐和紙工業(株)社長の中北さんにも感謝している。嬉しい限りである。

個展は撮影者である作者一人だけでは大したことが出来ない。色々な人達のお陰で成り立ち、お互いに妥協しない姿勢だからこそ、結果的に満足感の高い個展になる。感謝感謝の気持ちで一杯だ。来月からは福岡・梅田・名古屋での巡回展が始まるが、各地での反応が楽しみである。

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