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 No.406

三輪 薫(みわ かおる)


No.406 『写す』/デジタルプリント-2 2007/9/25

写真愛好家の好みを反映するためか、デジタルカメラでもプリンタでも、それらの定めた基準に沿って出せば、結構鮮やかな作品になってしまうことが多い気がする。写真界全体の傾向として、そのような期待が多いのだろう。アピール力がある作品は、鮮やかハイコントラストな描写だと勘違いしている人が多いせいだろうか。

7月、僕の師匠・吉田昭二先生が花の個展を開催していた六本木の東京ミッドタウンにある「富士フイルムフォトサロン」に行ってきた。この会場には初めて行ったのだが、2階のギャラリーは3会場あり、展示のプリントはダイレクトプリントの欠点がさらけ出され、ただただ、派手な色彩と高コントラストに仕上げられた作品が多かった。作者の好みかも知れないが、個展内容の作画と表現に応じたものとは思えず、作者は疑問を感じていないのだろうかと思ってしまったほどだ。しかし、先生の作品プリントは、さすがきちんとトーンが再現されていた。

しかし、どのような色やコントラストで再現しようと自由である。好みの問題であるからだ。だが、巷で多く開催されている写真展の作者が、どれだけフィルムやプリントのことを研究し、結果として現在愛用のフィルムを選択し、プリントの色彩やグラデーション再現を決めているのかと思うと、疑問に感じることが多すぎる。

写真の基本色は銀塩のモノクロ、次ぎに自然な色彩による銀塩のカラー写真だと思っている。写真には記録だけではなく、イメージ伝達の要素も大きい。映画にも言えるが、カラーよりもモノクロ映画のほうが想像力をかき立てられることが多いような気がする。色がないだけに観る側の観点で色を思い浮かべることができるからである。また、直接的な色がない分、テーマを見据え、判断できることにも繋がっているような気がする。

このようなことを踏まえ、写真界もデジタル全盛になった今、印画紙への露光時間などに限界のあった銀塩プリントを超える可能性を秘めたデジタルプリントで何を引き出せるのか、そろそろ真剣に考えてもよい時期に来ているだろう。

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