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 No.407

三輪 薫(みわ かおる)


No.407 『写す』/写真は引き算 2007/10/5

デジタル時代になったとはいえ、僕はモノクロ写真やモノトーンが好きで、昨年開催の4回目のファインプリント展では、初めてモノクロのデジタルプリントも展示した。僕が大好きな銀塩のバライタ印画紙「エクタルア」と同じ会場に展示しても違和感を感じないものにしたかった。

勿論、デジタルプリントの用紙はメインに愛用の伊勢和紙Photo。優しい風合いの伊勢和紙Photo のプリントは、温黒調のバライタ印画紙「エクタルア」と上手くとけ込んでいたように思っている。モノクロは色が前面に出ないだけに内包されたイメージを引き出すことができる。色を引き算することで、見る側がモノクロ写真を見て感じ、抱くイメージのほうが押しつけではない想像力を生んでくれる。

写真は被写体の中から一部をフレーミングして、作者が感じたことを画面に映し出す。限りなく引き算されたシンプルな画面のほうが、作者の思いをストレートに伝えられそうな気がする。カラーも同様で、余程の意図がない限り、自然で素直な色彩に溢れた描写のほうが見る側の気持ちが落ち着いてくる。

デジタルプリントを自家処理している人に多く見受けられるのが、撮影後の処理で何でも自由に出来てしまうと思っていることだ。パソコンでいろいろと処理を行っている内に、鮮やかタイプの銀塩フイルムでダイレクトプリントしたよりもハイコントラストでより鮮やかになっていても気が付かないこともある。レタッチしている内にエスカレートしてしまうからだろうか。

しかし、強調や誇張をしない素直な表現や描写、足し算ではなく引き算こそ難しく、何事も自然が一番と思っている。

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