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 No.417

三輪 薫(みわ かおる)


No.417 『写す』/コダック・カラーフイルムの販売中止 2007/12/31

僕が愛用し、常用するフィルムはコダック製が多い。カラーフィルムの色合いやモノクロフィルムのグラデーションやコントラスト再現にフィット感を抱くからである。しかし、これらのフィルムが、何故か次々と製造中止になる。困ったことだ。

被写体が何であれ、多くの銘柄のフィルムを使いこなさないと自分が求める色合いやグラデーションの再現ができない。数銘柄のフィルムで全てを補うには限界がある。僕が求める色調などは、画家がパレットで自分の色を作るように、多様な銘柄のフィルムを使いこなしながら引き出してきた。だから、フィルムの銘柄は多い方が嬉しい。

特に、フリーになってから撮り始めた自然風景がメインになるに従って、この思いが益々強くなってきた。しかし、カメラ誌などに掲載されている写真のデータを見ると、特に自然風景には多様な被写体や光や気象条件に拘わらず、プロもアマも「フジクロームベルビア+PLフィルター」の組み合わせが何故だか分からないが圧倒的に多い。

ベルビアは、ある部分ではコダックフィルムを超える世界最高峰のリバーサルフィルムだと思っている。しかし、万能フィルムではないことも同時に確信している。なのに、あらゆる条件で多用している人が余りにも多く、困惑を通り越しているというのが本音である。画家の多くが同じような色調で描いていることは絶対と言ってなく、どうして写真だけがこのようになっているのか、何年経っても理解できない。フジクロームではベルビア、エクタクロームではE100VSだと思っている人が多いようで、このフィルムさえあれば他のフィルムは必要ないと思っている人もいるのかも知れない。だからか、デジタル時代を迎え、次々とフィルムの銘柄が淘汰され、製造中止に追い込まれてしまうのだろうか。まことに残念である。

売り上げを目的とした企業だから仕方がないとはいえ、僅かしか売れないからと、素晴らしいリバーサルフィルムを、いとも簡単に製造を止めてしまうのを見るに忍びない。この原因は使う側にあり、余りにも視野の狭い使い方が招いた結果であることに無念さを感じている。生き残るのが、派手な鮮やかタイプになるのかも知れないと思うと寂しく悲しくなる。

自然風景を撮るようになってメインに愛用してきたカラーフィルムはコダクローム。モノクロはテクニカルパン。モノクロ印画紙はバライタ紙のファインアートとエクタルア。全て、既に製造中止となってしまったコダックのものばかりである。経済状態が許す限り買い込んだのだが、近いうちに使い果たし、なくなってしまう。コダクロームの国内での現像打ち切りと、愛用していたコダックエクタクロームフィルム製造中止のニュースが、今年を締めくくる悲しく残念な出来事になってしまった。

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