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 No.418

三輪 薫(みわ かおる)


No.418 『生きる』/人生の節目、節目の歳に思うこと 2008/1/1

昔「人生50年」と言った時代があったが、現代では何年になるのだろうか。短命だからよくなく、長命だからといってよいとは限らない。精一杯、悔いを残さないように生きることができれば本望である。しかし、今年還暦を迎える歳になって思うのは、悔いを残さないで生きることができるなんて、どれだけの人がいるのだろうかと言うことである。

僕は、小さな時から自分の思いを何となく貫いてきたように思っている。勿論、その思いを支えてくれた多くの人達あってのことと自覚している。それでも、悔いは多く残っているし、まだまだこれから先を望むように生きたいとの願望にも溢れている。

自活できない子供の頃はともかくとして、二十歳頃には家業の塗師を継いでいたのだが何となくこのままでよいのだろうかと悩んでいた。4年塗師修行を続けた後、一念発起で写真家を目指し、名古屋で学んで上京した。三十路を迎えた頃には、写真家を目指しながらも生活のために軌道修正して写真学校の教務課に勤めていて、何時初期の目標に戻るかの機会をうかがっていた。数年後には、妻には生活不安に泣かれながらもフリーになった。

40歳の時には、フリーになってから5回目の個展を開催し、フリーになった頃に長期で考えていた写真家人生の軌道に従って邁進していた。50歳の時には、15回目の個展を開催し、写真家として順風満帆の日々を送っていたような気がする。前年には、夢と思っていたコンタックスカレンダーの作者として指名を受け、全国カレンダー展では最高の評価も得られた。モノクロ写真大好きな僕が、念願だったファインプリント展の2回目を行い、やっと求め続けてきた方向性がはっきりと確認できた年だった。4年後に本命のファインプリント展を開催できた。2009年3月には5回目の個展を予定している。

さて、還暦を迎える今年は、僕にとってのどのような節目の年になるのだろうか。カメラで日本画や水墨画を描きたいと思い続けてきたことも、55歳にして「風香」展で実現できた。日々進化する時代の流れがあり、僕の予想よりも早くデジタル時代の到来を迎えた。「風香」展を初めとする個展開催の実現は、この進化が招いてくれた結果だった。このようなことは、多分65歳くらいにしか実現不可能だろうと思っていたので、僕にとっては10年早く到達したことになる。

「あなたの写真のテーマは何ですか」と聞かれたとき、最後に答えるのは『三輪薫です』。何故かと言えば、僕が表現分野である写真にのめり込みながら生きた来たのは、自分自身への興味が大きかったからである。25回開催の個展を通じ、ある程度は確認できたような気がする『三輪薫』だが、まだまだ未知な部分も多く残っている。少しでも未知な部分を少なくできる作品創りが、このまま進められることを願っている。体力と気力の衰えを乗り越えながら実行することが、この節目の年の課題だと思っている。3月末にはコンタックスサロンで開催し続けてきた5回目の「風光」展を行う。

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