Toppageへ
 No.423

三輪 薫(みわ かおる)


No.423 『写す』/カメラや車の作り 2008/2/12

最近発売されるレンズ交換式のカメラはデジタルばかりだが、中級機種でも20〜30万円代と銀塩カメラなら最高機種の価格だったものが随分安価になってきた。嬉しいことだ。また、外見も以前に比べて価格に見合った作りになってきたような気がする。高級なイメージとは言えないが、デジタルカメラの価格の半分くらいがCMOSやCCDと言われているから仕方がないのかも知れない。しかし、以前のメカニカルカメラに比べると、やっぱり安っぽさを感じてしまうのは確かである。

キヤノンもニコンも、銀塩のメカニカル機種であるFシリーズは、デザインもすっきりしていて、材質感のよい作りだった。M型ライカやハッッセルブラッドや二眼レフタイプのローライフレックスも同様で、気品を感じる作りである。何故このような姿勢でカメラを作ってくれないのか、まことに残念だが、短命なのだからと割り切っているのかも知れない。

カメラ機材は写ればよいと簡単に考えることが出来れば幸せだが、心を託して撮ろうとすれば自ずと機材への感情移入も見逃せなくなる。眺め、手にとって馴染むほどに心が豊かになると思うからだ。作品創りには、特にそのような気持ちを抱きたいと思うし、道具としての機材から受ける印象に期待したくなるものである。

車も同じ。走ればよいと割り切るなら別だが、乗っていて楽しく、心を豊かにしてくれる車に惹かれ、憧れる。気軽に買えるほどの車では完璧なものは望めないだろうが、同じ価格帯でサイズをワンクラス下げて捜すといろいろな選択肢がある。10数年ほど前にフォルクスワーゲンのゴルフワゴンに思い切って乗り換えたのも、日常の使い勝手がよいサイズと作りのよさからだった。車もカメラ同様の道具と考えていて、よい道具は使いやすく長持ちし、飽きも来ない。ゴルフワゴンは9年乗り続けたが新車時の新鮮さやボディーの輝きも失わず、イスのへたりも全く感じなくて乗り心地の変化もほとんどなくて驚いた。ボルボの生産国では、平均20年は乗り続けているという。道具としての完成度が高いからだろう。購入時に少々高額でも、長く乗り続けることができると逆に安価な気がする。カメラも同じだ。

親しくしている近所の方で、数年前にゴルフPoloに乗り換えた人がいる。夫婦揃ってディーラーに行き、ドア続きにある展示場のトヨタ車のドアを開け閉めし、音や感触によって作りの違いを感じて即決したという。しっかり造っている車は、ドアの開け閉めにもどっしりとしたよい音がするものだ。確かに4mに充たない車長の車が200万円前後では高く感じても不思議ではない。しかし、それだけの価値観を覚えてしまうのも確かである。この違いは乗って走ってみると、もっとよく分かる。しかし、試走しなくてもイスに座ってハンドルを握っただけでも作りの違いを感じる。このゴルフPoloも長く乗り続けたいと思わせる車だ。

戻る