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 No.428

三輪 薫(みわ かおる)


No.428 『写す』/「風光-V」展-2 2008/3/20

19日から25日まで開催の「風光-V」展の会場「京セラ・コンタックスサロン東京」は、いよいよ来年3月で閉館となってしまう。個展を主体に作品を発表している僕は、多分終生個展開催を続けるだろうが、このサロンで開催するカラー写真での個展は今回が最後になる。(3/23(日)は休館)

今回の個展作品は全てリバーサルフィルムで撮影し、CONTAX RTS IIIなどの35mm判5点/CONTAX 645での撮影が28点あり、フィルムも10銘柄といつもながらに多い。PKR/E100VS/E100G/E100GX/E100S/EPR/EPY/RVP/RAP/RDP を作画と表現で使い分けている。画家が描き出したい独自の色を持っているように、市販されている多様な銘柄から長年の研究と経験で選んで撮っている結果である。

銀塩プリントは、インターネガを作ってネガクリスタルペーパーで行っているため、淡いトーンから深い色合いまで実に見事なグラデーションで再現されている。さすが日本を代表するPGL(フォトグラファーズ・ラボラトリー)ならではのプリントだと満足している。PGLはプロラボ「ドイテクニカルフォト」が銀塩部門から撤退したとき、銀塩部門の人達が独立したラボで、今回プリントしていただいた那須川富美男さんには、15年くらい前から個展プリントをお願いしている。当初は僕の期待する仕上がりまで到達するには結構時間も掛かった。人それぞれに望む仕上げ方が違い、一流のラボマンとは言え発注者の意向の全てを理解するのは難しいからだ。満足できるプリントを作るにはラボの窓口で注文するのは難しく、やはりプリントを行ってくれる本人とのコミュニケーションは欠かせない。同じ方と長くお付き合いするのが大切である。

デジタルプリントも同様で、オペレーターとの直接対話と、本番プリントでの立ち会いが望ましい。2003年に開催した初めての和紙プリントによる個展「風香」では、何度も京都のラボに行って立ち会った。今回の大判プリントは、長年のお付き合いで僕の作風や意向をよく知っている中北喜得さんなので、見本プリントを添えてお願いした。何度となくテストプリントを繰り返し、相互に確認した。その上で、伊勢にはまる4日滞在して本番プリントに立ち会っている。

伊勢和紙デジタルプリントの手漉きの大判「伊勢斐紙 風雅 二枚重ね 四八判」(外寸:1,100mm×2,400mm)による作品は、「風香」展の越前和紙によるプリントサイズよりも遙かに大きく、大きいことも手伝って見応えのある仕上がりになったと自負している。この大判3点も含む合計6点の出力に足かけ1ヶ月半もの膨大な時間と惜しみない尽力を注ぎ込んでいただいた中北さんへの感謝の気持ちは言葉では言い尽くせない。15日〜16日に京都で開催された『全和連「手すき和紙フォーラム」in Kyoto 2008』での展示作品に、来場者がどのような反応を示したのか興味津々である。

当方での自家処理による伊勢和紙デジタルプリントは数機種のプリンタと多銘柄の伊勢和紙を組み合わせ、テストプリントを繰り返した。それぞれの作品毎に最適なプリンタと伊勢和紙を決め、本番プリントをしている。当方で出力したのは9点だが、足かけ一ヶ月半もの時間を要した。妥協を許さない拘ったデジタルプリントには、膨大な時間と経費が必要である。

京セラ・コンタックスサロンは、僕の作家活動を長年支え続けてくれた会場である。銀座界隈にあり、会場の広さ、上品で落ち着いた雰囲気の会場レイアウト、照明のよさなど、メーカーギャラリーの中では貴重な存在である。近年、「わの会」展やフォトワークショップ「風」展もこの会場で開催しており、昨年暮れには第1回「わの会」『大判中判カメラ同好会』展も開催した。今年の暮れにも5回目の「わの会」展を開催し、来年3月には4回目のフォトワークショップ「風」展と僕のファインプリント展の5回目が決まっている。あと1年ちょっとしか開館されていないと思うと寂しい限りだ。

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