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 No.436

三輪 薫(みわ かおる)


No.436 『写す』/写真のオリジナルとプリント 2008/6/4

写真のオリジナルとは何を指すのだろうか。ネガフィルムなら当然プリントであり、リバーサルフィルムの場合にはオリジナルになることもある。しかし、ハイコントラストな再現性をみせるリバーサルフィルムでは、肉眼で見て感動した世界が、きちんとフィルムに定着されないこともある。そのような場合にはプリント時に修正や調整を加えて完成度を上げることになる。

リバーサルフィルムのラチチュードはネガに比べてもかなり狭く、グラデーション豊かな再現を期待できるのは、光のコントラストが低い曇り日などの撮影条件に限られてくる。しかも、現在主流のポジからの銀塩プリントは、最近までダイレクトプリントが多くなっていた。確かに、色鮮やかでハイコントラストな再現性を見せるダイレクトプリントは多くの支持を集めてきた。しかし、ただでさえハイコントラストなライティングになる晴れた日などの撮影で、ネガよりもハイコントラストなポジフィルムで撮り、尚かつハイコントラストなダイレクトプリントで細やかな指示なしで注文すると、結果は知れている。

一流と言われている写真家の個展でも、何故かプリントは鮮やかすぎるほどの色合いや、ハイコントラストなプリントが目立つ。そのような人の監修を受けた写真展も同様である。刺激的な再現性を見せないと写真とは言えないのだろうかと勘違いしてしまいそうだ。しかし、そのような写真展では、その鮮やかな色調に感嘆の声を上げる来場者が多いのに驚いている。

近年は写真界もDigital時代を迎えているが、銀塩の印画紙を使ってプリントするラムダのようなデジタルプリントも主流になりつつある。その結果、ダイレクトプリントから撤退するプロラボも増えつつあるという。このまま進むとダイレクトプリントのカラーペーパーも需要が少なくなってきて、何時生産を打ち切られるのか心配だとプロラボの方が言っていた。

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